【本人とは全く関係ない外野の大して意味のない会話風景】



　おや、久し振りだね、『終焉（ジェンド）』　ああ、そんな名前じゃないって？　じゃあ、ナーナって呼べばいいのかな、はぁい。

　ふふ、珍しいね。どうしたの？　そんな顔をして。
　……ああ、私が『あっち』に行こうとしてるって思ったの？　そうだねえ、何かイジメがいのあるモノがあるか、美味しいコがいるなら行ってもいいけど……やぁだ、怖い顔をしなくてもイイでしょ？　知ってるよ『アレ』がいるって言いたいんでしょ。

　シュレディンガーの猫。割られない卵の中身。歪で綺麗で可愛そうな子供の成れの果て。

　ホント、可愛そうで可愛そうで、ああいうのは確かに好みだけどねー……。
　あはは、大丈夫大丈夫。私と合わないのは『女』だから。子を産み慈しみ育んで次に繋ぐ、そんな生産的活動、吐き気がしちゃうから勘弁して欲しいけど、『アレ』は為り損ないじゃない、ねえ。

　ホント、かーわいそうにねえ、愛したくて守りたかった相手に守られちゃって、願いを叶えてあげたくてもどうしようもない道化になっちゃって、それでもまだなんとかなるかもー、なんて信じて足掻いてる無駄な努力とか、見てて楽しいよねえ。

　だから行かないってば。あれでしょ、何だったっけ。『螺子（わたし）』が『在（い）る』と、『固定される』とか何とか言うんでしょ？
　『観測者（見てるだけ）』とかあんまり楽しくないんだけどねえ……やっぱり、手とか舌とか出して愉しめるのが一番だよ。

　もう、あんまりうるさいコト言わないでくれる？　犯罪行為には手を染めてないから。合意だよ、合意。ま、途中で後悔しちゃってるのが多いのは……勘違いって大変だねぇ、ってことで、かな。仕方ないじゃない、美味しそうなんだもの、ガマンなんて身体に悪いことしてらんないってば、ふふ。

　ああ、脱線しちゃったね。ともかく、私が『アレ』と出会うのは避けろって言いたくてこんなとこまできたんだ、ナーナちゃんは。
　んー、そこまで言われると行きたくなるんだけど、痛い、痛いってば、痛い痛い。わかってるよ、行かなきゃいいんでしょ、はいはい。
　万一会っちゃったら『混ざった』状態で『固定』されちゃうからって言うけどさ、私が行かなくっても、『アレ』が望みを叶えるのは難しい話じゃない？
　そもそも分化が終わってなかったのに無理矢理に引きずり出されかけて、慌てて戻ったら帰るところ間違えちゃって変なふうになったんでしょ、アレ。
　二になる前に一に戻っちゃったら、そこからもう一度二になるのは……諦めた方がいいんじゃない？

　せっかく男でも女でもなくなったんだからさ、その身体で幾らでも愉しめそうなのに、勿体無いよねえ……。
　あ、何その呆れた顔。何の偽りもない素直な感想だけど、何か間違ってる？
　そうそう、私がこうなのは今に始まったことじゃないんでしょ？　他の『螺子』も、どうせ私なんだから螺子くれた性格に決まってるしね。



　ま、今日は大人しく帰るから安心していいよ。まあ、帰り道にちょっと『遊ぶ』のは許容範囲内、だよね。
　ふふ、じゃあまたね、世界のどこかで。
　ああ、でも『終焉（きみ）』が再訪したら、世界が終わるんだっけ？

トーカは、じっとサタンを見つめている。