（ちょっとだけグロ注意？）






屋根の上に一人。世界を照らす月明かりと星の瞬きに、黒の髪は白銀に輝く。
その黄金の月光を濁らせる白い吐息は、風の中へと掻き消えてゆく。

一人思い出す。

アレは、今からどのくらい昔のことになろうか。

どれだけ昔かさえ忘れるほどの、昔の話。


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矯正開始。

停止。考えを改めよ。

考えを改めよ。

考えを改めよ。

考えを改めよ。

矯正再開。

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コイツはどうするのですか？

不良品は処分する。と言いたいが、コイツの力を廃棄してしまうのは多少惜しい。
「牙」は抜いた。この力は、我々が1から育てる。

了解いたしました。

ヘッ、自我が崩壊しかけてやがるな。あぁ汚ぇ、ゲロまみれかよ。触りたくもねーな。

どずっ

はん、腹ァ蹴っ飛ばしても殆ど反応ねーでやんの。つまんねーな。
　　　　　　　　　　　　　　バ　ラ
さーてと、じゃーとっとと解体しちまうか、っと…まずは右眼〜♪
目を握り潰す感触、好きなんだよな〜♪

ぐりゅっ

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生誕は祝福されなかった。

でも、それが忌み子だったとして、愛さない理由は何処にある？

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右眼が疼く。





「…くヒッ、かっ…ぁ、あぁあぁッ…！」

ああ、拙い。汗が止まらない。呼吸が出来なくなってきた。

トラウマでも残ってるのだろう。昔のことを思い出すと、たまにこうなる。


「…っか、あああっ！ああああああああああああ！！！！」

息ができない。苦しい。

顔をかきむしる。皮膚が破れようが、肉が抉れようが、爪が剥がれようが、力が緩められない。

「っぐ、ぅぅぅっ！っあ、ああっっっっ…！」


屋根の上を転げまわる。そのうち、呼吸も落ち着いてきた。

「…っは、はっ、は、はぁ、は…ぁ…」



…月は変わらず、星も変わらず。ただ変わったのはその人物の様子だけ。


「はぁー、はぁー………情けないな、『私』…」

歯車は未だ噛み合わない。

咄嗟に、シュウスケはフィリアスを庇うように一歩前に踏み出し、防御姿勢を取る。

…が、飛ばされてきたローバルの体はシュウスケには当たらなかった。

まるで霧のように、ローバルの肉体が空中で消えて行ったのだ。

…色々と荷物を提げた一角獣が此方へと駆けてくる。
口調から敵愾心などは全く感じられず、恐らくは敵ではなさそうだ。

しかし、斯様なエンブリオに対して面識は持っていない筈である。

…どうやら、盛大に(恐らくはこの一角獣の主と)人違いをしているらしい。
さて、この馬を無視してもいいし、何かしらしでかしてもいい。

びしっと指を――袖に隠れて見えないが――差して述べると、相も変わらずふわふわとした調子でネビュラに向き直る。

――その柔らかな気配が、凍てついた。

いつのまにか、あなたの背後には赤い衣を纏った男が立っている。
おもむろに手を伸ばし、あなたの背中に張り付いているものをべりりと剥がす。

声に出して読み上げた後、怪訝そうにあなたの、その鎧の中で光る赤い光を見る。


男の周囲で、何かが囁き合い、笑いさざめいている。
いくつもの視線があなたを無遠慮に観察している。

と、男は振り返り、誰も居ない空間を見た。そしてまたあなたに視線を戻し、呟く。

今の今まで知らなかったようだが、何らかの形で知識を得たようだ。


奇妙な男は、まだあなたを見ている。