『奇策の下見』

　一振りに全てを任せるために、奇策の『入り』をどうするべきか。それをロギは思案していた。
　だが、此処にいても分からないことだけが、分かった。
　
「あら、トイレかしら？」

　夜中起き上がって、戦場の下見に向かおうとすると、ハズサ様の声が後背がかかる。背を向けたまま、顔だけで後方を見た。

「ドールの妖精は、トイレしないよ」
「きゃあ、○ャ○ー○みたいね。羨ましいわ」
「えぐい」

「で、どこに行くのかしら？」
「……スズメドラゴンだけじゃ足りない、ちょっとした偵察だよ。手伝えって言われてて」
「そう、なら。行ってきなさい。死ぬんじゃないわよ。油断炒飯ですからね？」
「うん。お腹空いたじゃないか」
「……」
「行ってきます」

　戦場は、誠意や情や、正義や覚悟が綯い交ぜになった悪意の釜だと、思う。
　その悪意を最も強く抱いた者が、勝利する。それは、分かり切っていた。ロギの悪意は、人並みを外れているのだった。

頭を撫でてみる。その手はひんやりとして冷たかった

全力で駈け出し。