「ねえお母さん、クレーはどうして耳が長いの？」
子供の頃は、母にそう何度も尋ねたものだった。

周りの人はみな、まるくて短い、いわゆる普通の耳で、僕のように尖って長い耳の人は居なかった。母も父も兄も、おばあさまもおじいさまも、お隣のおじさんも、先生も友人も、旅人も郵便屋さんも、まるく短い耳をしていた。だから、丸耳の人と出会うたびに、僕は母になぜ自分が長い耳をもっているのか聞いたものだった。

そして、決まって母はこう答えるのだ。
「さあ、なんででしょうねえ。ふしぎね」

何度聞いても母は同じ答えをするので、次第に尋ねることはなくなってしまったが、内に抱える疑問は解消されずにずっと心に残っていた。いまでもそれは変わらない。いろいろな世界を旅するようになっても、なぜ故郷では私だけが耳が長いのか、わからないままだ。旅をするうちに、他の耳の長い種族にも出会うことは多くあったが、彼らはそういった種族であるという理由がはっきりしていて、僕が耳が長い理由とは関係があるのかわからなかった。

耳が長いということについて、子供の頃はとても気にしたもので、耳を隠してすごす方法はないものかよく悩んでいた。（気にし始めた頃から、おもえばずっと髪は長いままだ。）けれども、いつ頃からだったか、自分の耳の長さはさして気に留めるようなことも無くなっていた。自分のことよりも、興味の対象が周りの世界になったからかもしれないし、世界を回るうちにいろんな姿形の人達と出会い、たかだか耳の長さなんて小さなことだと思うようになったのかもしれない。

耳の長さの理由はずっとわからないままだし、おそらく母も本当に知らなかったのだろう。そして、母もまた、僕の耳の長さなど、さして気に知ることではないと思っていたのだと思う。

「ねえねえ、クレーはどうして耳が長いの？」
「さあ、なんででしょうね。ふしぎね」

喋るかどうかはわかりませんが、鳴き声のようなものを発することはできるようです。
どうやらにんじんは食べなさそうです。

ムラサキですし。
そうやって見ると頭のリボンが、茄子のヘタ的に見えてくる不思議。

今度作ってあげますね、とか言いつつ、たいへん嬉しそうにカレーを食べているのを見ています。

わたしの同居人も、妖精の友人がたいへん多くて、と、ため息一つ。

ばさばさって羽ばたきますし、とか、トラウマを思い出して。

取りなすでもなくそう返して、それからクレーの言葉には。

首を傾いでそんな風に言う。