13.


　頭上を見上げると、ちょうど鳥が飛んでいた。見たこともない鳥は――別段鳥に詳しいわけでもないのだが――雲と雲の間を縫うように滑空していく。まるで空に道があるかのようなその軌道は偶然にしてはできすぎで、何かの兆しを感じさせるには十分であったが、そもそもピアはそのようなまじないごとを信じはしない。現象とは常に原因と結果が引き起こすものだと疑わない。
　だから、視線を地上へ戻し三歩進んだところでポポロが駆け寄ってきたのは、まるで関係のない出来事だった。

　ポポロが見知らぬ相手でも気安く話しかけるのはいつものこととして、

　付き合いの長さから、ポポロが実は頭の回る奴だということは知っているが、その対象が他人となるとどうにも信用ができない。おそらく相手の表面しかポポロは見ていないのだろう。極端な言い方をすれば、他人にたいする興味がないと言ってもいい。
　――さて、
　ピアは大きく息を吐いて、歩き出す。
　少なくともこのときは、どうという感情も、浮かんでくることはなかった。

　　　＊

　一目見て、まず驚いた。
　アニマの飼い主と名乗った者は、メルンテーゼの現地人で一揆に参加していない、百姓の青年だった。
　見た目はずいぶんと若い――といっても、相手から見ればポポロやピアの方が若く見えるぐらいには成人である。
　しかしピアが驚いたのはそんなことではない。

　数瞬の間。いつまで経っても反応する気配のないピアの背後から、ポポロが顔を出してきた。

　青年はポポロとピアを交互に見て、不思議な顔をしてから、

　唐突に、ピアがそう言った。
　確かに青年の背後にはエンブリオがいて、みな首輪で繋がられていた。
　そしてそれこそが、ピアが先ほどから目を離せなかったものだ。

　青年の物言いたげな視線が、ピアへと向けられる。

　そのとき、ポポロの視線がピアへと向いた。青年はそれに気づかなかったし、ピアは気づいていてその上でそれを無視した。

　　　＊

　そして、帰路。
　いつの間にか日は傾き始めていて、細切れだったはずの雲は一塊の巨大なものへと変質していた。
　一雨くるかもしれない――。ピアは今、そんなことを考えている。
　後を追ってきたポポロが、自明なことを聞いてきた。

　荒い声が弾けた。そしてピアは、まるで自分の寝言で目を覚ましたかのような顔をしている。

　ポポロはその場で歩みを止め、ピアはお構いなしに歩き続ける。
　その背はまるで、暮れゆく空に恐怖する、迷子の歩みのように見える。
　その姿を、遠い昔に見たことがある。
　ポポロは一度唇を固く結んで、それからやはり笑みを浮かべて、走り出す。

　メルンテーゼの空が熱を帯びるように赤く染まっていくが、その実は世界は暗く冷え込んでいく。
　そして、そんな夕焼けにあぶり出されるように浮かび上がる影がひとつ。

　夜と雨が、近づいていた。

　ポポロの言葉を聞き、微笑んではいるけれど、ちょっぴりさみしそうな表情を浮かべた
　が、次の言葉を聞いてたちまち嬉しくなる

　そして2人は作り続け　　　　

　まあ逆流なら泳ぐ以前に水流操作でもして脱出したほうが安全ですが、と小さく言い

「あ」という言葉から続く内容を一瞬理解できずに考えこんでしまう。

　

って顔である。
　

俗物な神様というのもちょっと…といいたげだ

ある程度、搾り取るだけです。
程度が大事なようで

ストラップを引いた途端、打ち出されたペルは空の旅へと旅立ち──────はせずに
再びストラップに捕まって帰ってきました。

割とすごい目に遭いつつもどこか楽しげなペルでした。

──これから、タンポポ荘での生活が始まります。