仲間が一人減って数日が経った。

何も言わずに去ってしまった彼が今どこにいるのか、生きているのかさえ分からない状況だ。

戦闘における攻撃の要となっていた彼が抜けてしまったことに、皆最初は戸惑っていた。

しかし日が経つにつれて互いが開いた穴を補うようになり、今ではそつなく戦闘をこなすことが出来るようになりつつある。

悪い事ではないのだろう。戦いに勝たなければ、先には進めないのだ。

でも、もし仮に自分がいなくなったら。その時も今回のようにいつの間にかそれが当たり前になり、自分がいたことさえ忘れられてしまうのではないか。

そんな言いようのない不安が、まるで呪いのように思考にまとわりついて離れない。

そんなことを漆黒のエンブリオに話したら、あろうことか鼻で哂われた。こっちは真面目に相談したというのに。

曰く、『俺が一度会った顔を忘れると思っているのか』だそうだ。

何だか照れくさいから、そういう事は面と向かって言わないで欲しい。

……嬉しいけれど。