強引に足を掴み、テーピングを行う。

どんな思いで、この一揆に参加しているのか。
そう問われて、アムルイはあっけらかんと答えた。

ただ、と彼女は言葉を区切り、

捨て石のつもりだ、という答えは予想していなかった。
しかしそれは、兵士の思考に近いのではないだろうか？
全体の存続のために個を犠牲にする。
もしそれが自分であったとしても、それが最善であるならば。
個ではなく全体を重視するのであれば、納得できる答えではあった。

問題は個人的な答えの方だ。
知りたいと望むことは、戦いの動機に成り得るかもしれない。
だが一揆という抗いの戦いにおいて、それは動機として相応しいものなのだろうか？
アムルイの言葉には、この世界の住民として、あって然るべき敵意や憎悪もない。
そこにあるのは純粋な疑問と好奇心だけ。
義侠心もなければ、功名を望む野心もない。
自らが義侠心で戦うと決めた君だからこそ、アムルイの意思は異質に映る。

あるいは未だ無自覚の感情があるのかもしれない。
知りたいと望ませ、戦うと決意させるだけの感情が。
そこまで考えて、君はかぶりを振った。
まさかそんなことはないだろう、と思ったのが半分。
もしそうだったならどうしよう、と思ったのがもう半分だ。
君自身、その感情については話に聞いた程度だ。
考えようとしても、それについて知らなさ過ぎた。

だが、君の様子に気付いているのか、いないのか。
アムルイは眉を八の字にして笑った。

問われても、君には曖昧に笑うことしかできなかった。
恋。それは自分に縁があるものなのだろうか？
故郷に帰れば、君に王女としての身分と、役割が待っている。
自分を犠牲にしたいと思うわけではないが――――
必要があれば、恋とは無縁の婚姻を結ぶことになるのだろう。

グレンダとアムルイ。
王女と捨て石。
あまりにも違い過ぎるが、奇妙なところで似通うものがある。
ひょっとすると、難しく考え過ぎているだけで、皆こんなものなのだろうか。
だとすれば。
自分にも彼女のように、知りたいと望むものがあるのだろうか？

明らかに女性に対して向けるような言葉では無い事を真剣な顔で尋ねる。
少女の微妙そうな顔を無視して、ロックは語りだす。

意味不明な事を言いつつ
照れ隠しなのか肩に乗っているキラーインコの頭を握りしめながら
言葉を続ける。

そう言うと彼はまた前を向いて歩きだした……

物陰から除く影。黒い髪に白い肌、紅い目。じーっとグレンダを凝視している。

ぎくしゃくとした動きで近づいてくる。殺意などと言ったものは感じない、が――

何処からかもう1つ声が聞こえる。エンブリオだろうか、姿は見えない。