ラケルトには逃げられてしまった。最初からそうするつもりだったのだろう。　
烏合の衆とはいえ倍の数の兵士を相手にして、我々も疲弊していたため　
捕らえることはできなかった。　
奴とはまた剣を交えることになるかもしれない。　
そのときは、あの男も本気で挑んでくることだろう。　

兵舎を出た我々は、近くで一揆衆の隊がひとつ活動していることを察知した。　
手元の資料を確認する。　
登録名『ジュエリーフォース』、あれもまた目立つ活動を行っている隊の一つだった。　
先日人員の組み換えを行ったばかりらしく、連携がとれていなさそうなのがわかる。　
逃さずに襲撃するのは容易といえよう。　

律法小隊はあまりに離れた実力のものを粛清の対象としない。　
我々の武力行使の目的の一つとして、将来の危険因子を排除するため、というものがある。　
強すぎる隊に挑むのは時期尚早であるし、弱すぎる隊に仕掛けるのは時間のムダだからだ。　
奇しくもこれは、追い剥ぎだけが目的の賞金首どもと同じ考え方のようであるが。　

そういう意味で、最初に仕掛けた若者たちの隊も、ジュエリーフォースも　
ちょうどいい相手だった。　

それとは関係ないが、わたしは動物と子供がキライだ。　

　　

　

思考が冷めていく。
だけれど、感情は爆ぜる。
人の命を平然を奪える集団に対しての怒り。
一揆の邪魔をされている事への怒り。

…後は行った先でウンディーネが時間を稼いでくれるはずだ。
幼い子がこの場に居合わせるのは、まずい。

まあいい。今はそんなことを言っている場合じゃない。
気づかれているかもしれないが、この方が相手も都合がいいだろう。

振り返り、向き直る。