拝啓、お師匠様。


お師匠様とエンブリオとの関係について考える機会がありました。
お師匠様は、エンブリオとの共通点を多く持っているように思えます。

かつて私に炎の力を与えてくれていたこと、自らの姿を自由に変えることができること。

物理的な肉体を持たないという点は精霊に近いのでは、と思っていましたが、
契約者に力を与えるという点はエンブリオに近い。

いや、精霊とエンブリオが別のものであるという考えが違っているのかもしれません。

「問題を、現象を必要以上に複雑にさせるな」
というのは、お師匠様によく言われていたことでしたね。

精霊とエンブリオという別々の存在がいるのではなく、精霊としての側面と、エンブリオとしての側面を持つ存在がいる、と言う方がシンプルです。

精霊術も、術者と精霊がごく短い間契約を結び、力を借りているのだおｔ考えればつじつまが合う。
一瞬の契約には、長期の契約とは違った利点がある。
瞬間の契約だからこそ、こちらが渡す対価は短くて済むし、同時に複数――例えば地水火風の4種を同時に――契約することもできる。

長期契約（エンブリオとしての姿）をすれば、彼らに渡さなければいけない対価はそれだけ多くなるが、自分が望むように彼らの姿と変えることもできる。

やや遠くを見ながら語る。

思わず涙声になりつつ顔を下げてしまう。

　首を傾げ。
　妖怪に転化する話には、不思議なものを見る想いで視線を投げた。

　此の少年、何処まで正気なのだろうかと、伺うように息をひそめ。
　言葉の馴れについては、ほがらかに笑った。

のろのろと顔を上げるクラガの腕から赤黒い焔が立ち上る。それは獣へと姿を変え、具現化した。

「―――。」

「―――。」