月が煌々と照っている。
部屋に差し込む灯りだけが、唯一の光源だった。

静かな部屋には、少女の寝息だけが響いている。

よくやるものだ、と思う。
今までずっと城の中に居た少女が、いきなり外――それも世界の外に出て戦っているのだ。
すぐに折れてもおかしくはないと思っていたのだが、既に10日も経っているにも関わらず泣き言一つ言わないのは賞賛に値する。

おかしな感傷を得るものだ、と思う。
本来存在していた時ならば、このような感傷を得る事はほぼなかっただろう。
それがこのような事になっているのは、少し愉快な気分だった。

そう、一人ごちる。
既に月は傾き、そろそろ日が顔を出そうとしていた。

夢を見ている。
自分ではない誰かの夢だ。

――神を超える。

ともすれば陳腐な御伽噺とすら捉えられる、それに真っ向から挑戦した男。
彼がまず挑んだのは、自らの命であった。
彼自身が編み出した秘術。
現在では失われているそれは、彼の命を奪った。――予定通りに。

命は奪われ、そこには魂だけが残る。
魂にまで編まれた術式は、肉体を、命を失ってなお彼を現世に留まらせた。
既に死んでいるが故に、死なない。
――無機にして不死の王（ノーライフキング）。
そう呼ばれた彼の、二度目の生誕の時であった。

　ほんの一瞬何か嘆いているような暗い顔をしたが、しかしその表情はすぐに嘘のような満面の笑みで塗り固められた―――

↑仕入れに失敗して、在庫をもてあましている。