何と無しに溜め息が出てしまう。そんな、夜。

現在の状況はと言えば、前に花音先輩が吸血鬼パーティにミラルカさんと交代で加わっていたときに知り合った、とあるお嬢様二人とメイド二人？という人たちと組んで２人ずつに分かれてキャンプを張っているところだ。

装備の材料と引き換えに、明日兵舎へと案内することになっているのでその都合でこんなパーティになっている。

一緒にいるのはリリアさんで、花音先輩とユライさんは別行動だ。

本来なら唯でさえ異世界にいるのに、加えて未だに記憶を取り戻す兆しも見えない花音先輩の傍を離れたくは無い。

それでも、これまでも何度か別行動を取れたのは先輩には『神』がついているからだ。

神、と簡単に言ったけど、例え話などではなく、本物の神様。
花音先輩が高校時代、私と一緒に部活にいたとき。
個人的に気にいられてそのまま契約者としての契約を交わした、という結構ロックな神様。

そんなエピソードとは裏腹にその力は勿論本物で、魔法をほとんど使えなくなった花音先輩が歌仙――環ちゃんが使っていた霊刀――であれだけ戦えているのも、単にその神様の力である。

もっとも、今、花音先輩についているのは抜け殻程度の力しか持たない分身――それでも、その力は私が花音先輩を任せるに雄に足るものだが――で、他のエンブリオと同じように振る舞っているのでその事実を花音先輩は知らない。

そんなわけで、私がついていなくとも、その神様が気分屋なところを除けば不安はない、と言っていい現状。

だけど、私の口をついて出るのは溜め息だった。


『心配か？不満か？』

話しかけてきたのは稲穂。柊家の土地神、のような存在。今は私と行動をともにしている。

『どういう、も、何も。そのままの意味だが？』

もう長い付き合いで、私が柊家を捨てる選択をしたときも前と変わらず力を貸してくれている。

だけどその真意は掴めない、今も。

『全く逆に思えるのだがな』

まったく。こいつは、ズバズバと言ってくれる。でも、今の私には有り難かったかもしれない。

花音先輩は、将来的な不安も見据えて神格の存在と契約を交わした。

今回の事件は勿論イレギュラーであったにせよ、結果として危機回避に十分な役割を果たしている。

その一方私は？環ちゃんと約束してきたのに、自分の身を守るので精一杯な時も多い。

元の世界に一緒に帰れたとしても、その後に花音先輩に立ちはだかるであろう危機から護ることなんで出来るのかわからない。

今、目の前にある現実は、それより先の未来にある現実までも私に突きつけている気がした。

『そうだな、私などとは比べ物にならないレベルに存在しているからな』

だがお前はそれでいいのか？とは聞かれなかった。でも、自分に問いかけていた。

結論は出ているはず。私は環ちゃんとは違う。美浜家の人間じゃない――

頭を軽く振って、考えるのをやめにした。

星も見えない夜空を仰ぎつつ、私はそれだけ言って休むことにした。

私は昔の私を知っている子に近寄った

ごたごたしていてこうしてゆっくり喋れるのはあんまりなかったかな……

でも、流那ちゃんは昔の私を慕っていたのだ。今の私ではない。いやまぁ、今の私ってそんなキャラじゃないし……

記憶が戻ったら今の私はどうなるんだろうなぁ。一緒になっちゃうのかな……？　わからない……

……あれ？