［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

　常磐レン──本名ではないらしい──後の相方と出会った日のことは、今でもよく覚えている。
　あんなベタな展開にこの身が陥るなどとは、想像したこともなかったからだ。

　病院帰りに何気なく乗ったのは、いつもと違う電車。
　たった一本、電車を変えただけで異世界にでも迷い込んだかのような錯覚を得た。
　街並みも、道の狭さも人間も、なにもかもが違って見える。
　この世界には、まだまだ僕の知らない景色も、世界も、人間もいるのだということを思い知った。　



　運悪く人とぶつかり、それを口実にした男たちに絡まれた時、現れたのが相方だった。
　といっても、かっこよく彼らを倒したわけでもなければ、威嚇ひとつで蜘蛛の子を散らせたわけでもない。

　相方はなんともみすぼらしい姿で僕たちの目の前に現れて、僕の方が心配になるほど弱々しく突き飛ばされた。
　……問題は、そこからだった。



　レンはまるで焦点の定まらない眼球を震わせ、
　気でも違えたかのようにそのような言葉をひたすら垂れ流し始めたのだ。

　それには僕も含めたその場の全員が言葉を失い、そもそも言葉を挟む暇さえなく、
　恐れおののき、僕をその場に転がして男たちは去って行く。

　どうしたものかと思った。呼ぶべきものは警察か、それとも児童相談所か悩む。
　しかし僕の心配など知る由もなく、彼はボサボサに乱れた髪を手で軽く梳かしてから、僕を睨んで言い放ったのだ。



　わざとだった。レンはわざわざ髪を乱して、衣服を崩して、体を汚して枯れた声で慄いて。
　正気を失った眼を剥いて、男たちがその場から逃げるよう仕向けた。

　正直、気付いた瞬間痺れた。ゾクゾクした。
　あれほどまでの演技を即興で、騙すためにやったのかと。

　あの瞬間、誰もがこのみすぼらしい少年を恐れた。
　下手に刺激すれば、今にも金切声を上げて襲い掛かってくるのではないかと、そのような幻覚さえも見せた。

　それが、今はどうだ。まるで別人だ。同じ顔だったかすらも、もはやわからない。

　聞けば、相方は隣の建物に入っている劇団の団員なのだという。
　軽く手を擦り剥いている僕を見て、手当してやるから来いとレンはスタジオへ案内してくれた。

　そして、僕の手当をする彼に言った。



　僕はレンに話した。
　結論から言えば、首を縦に振らせることはできなかったが。

　僕は設立されたばかりの、小さな芸能事務所に所属していた。
　一年。ただ一年だけでいいからと、共に活動してくれるアイドルを探していたのだ。
　しかし、そのような条件で承諾する人間はそういない。トップを目指す同業者であれば、尚更。

　このとき、僕は確かにレンの能力が欲しいと思った。
　それと同時に、レンの能力をこのような場所で燻らせてしまうのが勿体ないと思ったのだ。
　レンの能力は、もっと多くの人間に見せてるべきだ。僕は当然のように思ったのである。

　それに、このような劇団にも所属している以上、少なからずメディア進出することも視野だろう。
　だからこそ、僕とレンの意見はまるで噛み合わなかった。

　レンは別に、演者になりたくて劇団に所属しているわけではないと言った。
　身寄りがなく、未成年故に収入も心許ない。学校にも通えない。
　だから、劇団の手伝いをする代わりに寮を間借りし、暮らしているのだと。

　しかし、僕は諦めきれなかった。
　今は興味がなくとも、この先もそうとは限らない。

　翌日も、僕は劇団に足を伸ばした。
　アンタの能力は埋もれさせるべきではないと、説き続けた。
　だが、レンの反応は相変わらず芳しいものではなかった。もう暫く白い問題集を前に、ずっと眉をしかめたまま。



　……その日からの生活は、充実していた。あっという間だった。
　約束通りレンの勉強を見る一方で、乗り気でないその手を引いて練習用のスタジオによく連れて行った。
　時には、劇団の演者が足りないということで僕がエキストラとして参加することもあった。
　俳優としてやっていくつもりこそなかったが、何事も経験だ。存外にも楽しんだ。

　自分とは違う人生を演じるというのは、なんとも新鮮である。
　それと同時に、やはりレンの抜きん出た才能を痛感した。
　実際に演ってみてわかる。僕にはできない。

　目線の一つ、指先の動きひとつ、呼吸のひとつ。何もかもに意味を感じる。
　何もかもに感情が込められている。何もかもに人柄を、人生を、経験を感じる。
　レンの、ではない。台本に書かれた、この物語の登場人物たちのものだ。


　──言ってしまえば、レン自身の人生を感じることはなかった。





　──月日は流れ、試験の日を迎えた。
　結果は一ヶ月後。僕らが"相方"である期限は、あと僅か。

　あれから、相方は文句を言いながらも、約束通り僕の理想についてきてくれた。
　元々演劇に携わっていたこともあり、レンの声はよく通った。何より、感情の込め方が一際優れていた。
　問題はダンス。こればかりは一朝一夕とはいかない。

　だが、この月日の間で確かに変わったことがある。

「大丈夫か？」

　僕とぶつかって転倒したレンに、手を差し出す。
　それを一瞥することもなく、相方は手を取った。

「平気。今のところ、もう一度お願い」

　たったそれだけと言えばそれまで。
　しかし、僕にとっては大きな変化だった。

「なァ、レン」

　だから僕は、期限を、試験の結果を待たずして、もう一度言った。







　手を取ったまま、相方の眼をじっと見つめ、伝える。
　普段、軽い調子で発言している自覚があるからこそ、真摯に話す必要があると思った。
　案の定、レンは驚いたように目を瞠る。

　確かに、最初は誰でもよかった。レンの才能が欲しかった。おおよそ気持ちは変わらない。
　あの時現れたのがレンでなければ、僕は今頃、他の誰かと踊っていたのかもしれない。

　レンである必要はない。少なくとも、僕の目的を果たすためには、きっと。

「お前はオレのこと、何も知らねえからそういうこと言えるんだよ」

　いつかのように黙り込み、レンは視線を背けて呟いた。

「オレはお前のことだって、よく知らない。分かってやれねえよ、お前のこと」
「それでもいいって、僕は思ってる。最初に言っただろ、アンタである必要はなかった」

　訝し気な目が戻ってくる。
　気持ちはわかる。普通なら、"君でなければダメだ"とか宣うところだ。

「でも、こうして一緒に過ごしたのはアンタだし、僕が知るアンタ以上を僕は求めない」

　共に過ごした時間が全てであり、過去がどうあれ関係はない。

　美しく、綺麗な言葉で包み上げる。それで誤魔化そうとか、丸め込もうなどとは思っていない。

　信じているだけである。
　見せたくないもの、見たくないものを無理に見せるなど、ただ不遜な行為だ。

「それとも、レンは何か欲しいもンでもあんの？」
「……」

　手をゆるやかに離して尋ねれば、レンは言葉を詰まらせ黙り込んだ。
　やがてひとつ息を吐き、ゆるく頭を左右に振る。

「いいや──。お前がそれでいいのなら、オレに異論はねえよ」

　呆れたように肩を竦めて、相方は苦笑した。
　そして今しがた解いた手を掴んで、「じゃ、引き続きよろしく」と調子よく言ったのだ。


「アキラ」

──確かに、この時は最善だと思った。


過去などいらない。
育まれた我々の想いが、過ごした時間が、何よりも尊いものなのだと。


信じて、疑わなかったのだ。

それが、まさか、




僕の名付けた忌わしき異能が、そこにはあった。

ENo.678 ヤト とのやりとり

ItemNo.14 白雪のポプリ を使用しました！
　魔香のため、体調は回復しなかった。
　今回の全戦闘において 深手49 が発揮されます。
　今回の結果でのスキル熟練度が伸びやすくなった！

自然LV を 6 DOWN。（LV10⇒4、+6CP、-6FP）
響鳴LV を 25 DOWN。（LV25⇒0、+25CP、-25FP）

時空LV を 36 UP！（LV4⇒40、-36CP）
付加LV を 5 UP！（LV85⇒90、-5CP）

ItemNo.15 活力漲る魔力溢れる星屑 から楽器『星喰の神楽鈴』を作製しました！
　⇒ 星喰の神楽鈴／楽器：強さ383／［効果1］活力50 ［効果2］－ ［効果3］活力33

ItemNo.4 活力漲る何か固い物体 から楽器『死人に口無し』を作製しました！
　⇒ 死人に口無し／楽器：強さ95／［効果1］共鳴10 ［効果2］－ ［効果3］活力33


ItemNo.15 星喰の神楽鈴 に ItemNo.42 雪花石膏 を付加しました！
　⇒ 特質強化！効果3のLVが11増加！
　⇒ 星喰の神楽鈴／楽器：強さ383／［効果1］活力50 ［効果2］煙霞45 ［効果3］活力44


カードを作成しましたが誰とも交換されず自分のものとなりました！

『泥被る造花』 （レスレクシオン）


ダインスレイフ を研究しました！（深度0⇒1）
ダインスレイフ を研究しました！（深度1⇒2）
グシオン を研究しました！（深度0⇒1）

パリィ を習得！
スカイディバイド を習得！
エアスラッシュ を習得！
ソルプレーザ を習得！
クリエイト：タービュランス を習得！
サモン：ジン を習得！
ブラーゼン を習得！
エアレーズング を習得！
サモン：スレイプニル を習得！
百発百中 を習得！
遠隔付加 を習得！
ピリオド を習得！
雲煙飛動 を習得！
クリエイト：リーウェイ を習得！
グシオン を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

泥被る造花(36) は オパール を入手！
泥被る造花(36) は 桜の光焔 を入手！

マシカ区 K-3（沼地）に移動！（体調25⇒24）
マシカ区 L-3（沼地）に移動！（体調24⇒23）
マシカ区 M-3（山岳）に移動！（体調23⇒22）
マシカ区 N-3（山岳）に移動！（体調22⇒21）

MISSION!!
マシカ区 K-4：マシカ駅 が発生！
　　 - 泥被る造花(36) が経由した マシカ区 K-4：マシカ駅

［803 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［437 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［472 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［202 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［398 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［330 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［271 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［197 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［118 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［142 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［154 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［309 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［48 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［226 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光
［102 / 300］ ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
［110 / 200］ ―― 《図書館》蜂のように刺し
［110 / 200］ ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う
［58 / 200］ ―― 《本の壁》荒れ狂う領域
［88 / 100］ ―― 《珈琲店》反転攻勢
［100 / 100］ ―― 《屋台》更なる加護
［75 / 100］ ―― 《苺畑》不安定性
［15 / 100］ ―― 《荒波》強き壁
［100 / 100］ ―― 《小集落》猛襲
［41 / 100］ ―― 《落書き壁》リアクト
［90 / 100］ ―― 《変な像》揺らぎ
［100 / 100］ ―― 《白い渦》不幸
［100 / 100］ ―― 《黒い渦》不運
［18 / 100］ ―― 《線路》駆逐



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

どこかの森のなか。

　





　

大きな木に寄り掛かり座る３人。

　













　

　







　

明るい声で話すふたり。




ふたりの手などを一瞥し、上を向き静かに息を吐く白南海。

　

　

　










　








そう言って立ち上がり、その場を去る白南海。

　












　

　

　

チャットが閉じられる――

マシカ駅。

広々とした駅前に、神々しい光――

　



　

ゆっくりと近づいてくる。