夢を見ている。








嫌な夢だ。
嫌な夢ばかりだ。
苦しいばかりで、なにも救われない。なにも救えない。








それらはみんな夢に過ぎない。

作楽誘乃は物心ついた頃から施設で暮らしている。

死んだ母親なんて居ないし、弟だって居ない。
父親に殴られたことなんてない。
あの施設の人たちが、作楽誘乃にとっての家族だ。




異能も、他には持っていないはずだ。
花を生み出す異能。そのひとつきり。
自分の目で見たことはないから、ひとつだってないかもしれない。




ないもので誰かを傷つけることはできない。
第一、今まで。
友達に嫌われてしまったことだって、


あるわけ、

「千崎トキの世界に。 　作楽誘乃は『もう要らない』」

あるわけないなんて、どうして思ったんだろう。
ないに、決まっている。



本当に夢であったなら、良かったのに。
だってこれは、みんな夢だ。














血の気が引いて。身体が冷たくなって。
けれどこれも、ただの夢だ。










夢だから。……だから。
大丈夫だよって、







大丈夫だよって、その言葉だけで良い。
その言葉だけで良いから。
どうか、“いつもみたいに”。
































































したたかに背を打ち据える。
苦痛に顔が歪み、汗が噴き出る。
そうして遅れて、己が殆ど組み伏せられていることに気づいた。

……誰に？










「──また」





穏やかな声が降る。
そうであるのに、加えられる力が不相応に痛みを伝えてくる。






「また、逃げようとしてる」

「楽になろうとしてる」





大人であるにしては、華奢な手のひら。
男性であるにしては、声音も高い。





「起きること全てが夢なんだって安心したい」

「いつまでも肯定されていたい」








「きみはいつだって都合が良い」






冷たい指先が喉元を滑る。
なぞって、一筋を描く。

それがそのまま、己の首を包んだ。








「……じゃあ、現実は？」

「きみ自身の居る場所は？」

「現実を認めないままで、夢を騙るの？」



















「きみはもう分かってるはずでしょ」











ゆらりと影が揺れる。

その声の在り処を。その心の有り様を。
認めてしまえば、どうしようもなく。














目に映る全ては、決してなかったことにはできないのだから。














「何もかも、夢じゃないってことくらい」











“作楽誘乃”が、笑っていた。

▲	ケイ 「俺には心がない、というヨシノさんが分からない。 　最初に怖いって思ってしまったの、そのせいだと思う。 　 　あの場所の子ども達は？遠目だったけど、笑ったり怒ったりしてた。 　子どもたちをどれくらいかは分からないけど、 　きっと、ずっと側に見てて、ヨシノさん自身には湧き上がるものは無かったの？ 　もし、あの街で湧き上がるものがあるとしたら、今も思い出したりはできる？」

	ケイ 「難しいと言っておきながら、簡単に割り切れるんだ。」

	あなたが両肩に手を添えている、眠りについた子を見て口元を緩くし微笑む。 その眼差しは同時に、寝ている事を確認するように暫し見つめていた。

	ケイ 「…ね。もしも俺が、ヨシノさんみたいに心を無くしたいって言ったら怒る？ 　ほんの少し、ヨシノさんが勝ち負けに関係なく導くといったことについて、興味がある。 　それはどんな風に？」

	ケイ 「…俺、実はお父さんが侵略側だったから、侵略側の味方してるんだ。 　俺だって、覚悟がない訳じゃない。 　それは戦う事だって考えずに、ちょっとでも一緒にいたいから異能を使い、 　奪う事だって考えずに、少しでも助けたいから侵略陣営についた。 　でも……。」

	ケイ 「俺のこと、友達だって呼んでくれた友達を傷つけちゃうのは嫌だよ。 　きっとあいつにとって、防衛側が勝つほうが良いんだ。 　俺、なんて言えばいいのか分かんなくって。 　ぅ、ぅ……と……ち…なのに……。」

▲	タヌキ 「…流石は、俺の一番弟子だ。 実に理解が早いし、頭の柔らかさが凄まじい。 この俺も、脳に力を込めなければ理解が追い付かない所だった。」

	タヌキ 「まあ、そうだな……。 何はともあれ、俺がタヌキだと分かってくれたならそれで良い。 この程度で気を悪くするようでは、師匠など到底務まらないからな。」

	タヌキ 「その上で、お前が俺を友と思ってくれるなら、それは結構なことだ！ まあ、もっと言うなら師匠と一番弟子なのだがな！ その違いは俺がこれから教えて行くのだから、今はそれで良いだろう。」

	タヌキ 「その方が、一番弟子の事情にも適うようだからな！ 俺はタヌキだが、かつてはヒトにも似た格好をしていて……。 つまり、どちらだとしても、お前の師匠になれるのだからな！」

	【表情の見えない泥んこのまま。 どこか誇らしげな視線を、折り曲げた弟子の指に向けた。】

	タヌキ 「イバラシティ、か……。 うーん、そんな名前だった気もするが……。 実を言うと、そっちの名前もあまりよく覚えていなくてな……。」

	タヌキ 「更に言うなら、そのルケイとやらも良く分からん。 ハッケイなら、俺の得意技なのだけれどな。 俺の姿を変えてしまうほど恐ろしい術が、世界には存在するということか……。」

	タヌキ 「そう、だな。 一番弟子の考えと一致するかは、分からないけれどな。 一つ特別に、俺の出生にまつわる秘密を教えてやろう。」

	タヌキ 「それは、俺の母さんのことなのだけれどな。 母さんがタヌキであることは話した通りだが、実はそれだけじゃないんだ。 これを聞いたら、一番弟子はきっと驚くだろうな。」

	タヌキ 「良いか、俺の母さんはな…忍者だったんだ！ それもただの忍者じゃない、指折りの凄腕の忍者タヌキだったんだぞ！ 四国のえらいタヌキからも、何度も褒められたと言っていたしな！」

	タヌキ 「あらゆる武術や学問は当然のこと！ 変化の術から万象を操る術理まで、出来ないことは一つも無かった！と言っていた！ 俺はそんなすごい忍者タヌキの子どもなんだ！」

	タヌキ 「どうだ、一番弟子！　見直したか？ お前の師匠は、すごい忍者タヌキの血を引いているんだぞ！」

	【天まで昇って行きそうなくらい鼻高々になった。】

▲	ニアク 「感情がない？」

	問い返す声音には〈そのようには見えない〉という意味があからさまに込められていた。 　人間は無機質な機械にさえ感情を見出すのだから、人と同じように笑って語るあなたに〈それ〉がないと受け止めることは難しい。 　戸惑いと疑いの眼差しが、隠されることなくあなたへと向けられる。

	ニアク 「感情はなくっても、理解はできる、ってことか？」

	その視線が目を伏せ、遮られた。女は唸るように声を上げて、腕を組む。

	ニアク 「ここで話をしていると、捉えどころのない連中に出くわすことがある。 　押しても引いても手応えがない、私の生きてきた論理では解き明かせないような奴ら……」

	ニアク 「私は、苦しみに意味を見出しすぎるんだろうな。そこに価値があると思ってる。 　自罰的だって、同行者にも言われたよ。 　モドラっているだろ。あの金髪で、褐色の、へらへらした奴……」

	ニアク 「だから……ああ、そう、あんまり褒めてくれるなよ。 　そういう口振りで話されると、不安になっちまう。 　君のことは分からないよ。感情がないようにも見えない。ただ、羨ましいって思ってないのは本当みたいだ」

以下の相手に送信しました

誘う夢見草 ENo.147 ヨシノ

ハザマに生きるもの 座敷童子

誘う夢見草 ENo.147 ヨシノ

ほぼソロ楽団 ENo.371 ノリーン

ヒノデ区 M-2：ヒノデコーポレーション

誘う夢見草 ENo.147 ヨシノ

立ちはだかるもの ゾンビリーダー ゾンビA ゾンビB ゾンビC

ヒノデ区 M-2 周辺：ヒノデコーポレーション

13人の声が響いています。

誘う夢見草 ENo.147 ヨシノ

ハザマに生きるもの 陸鮎

611

241

誘う夢見草 ENo.147 ヨシノ

TeamNo.116 ENo.116 『柊葉名』

434

412

カミセイ区 B-19 周辺

ゆ～ぱらだいす

誘う夢見草 ENo.147 ヨシノ

立ちはだかるもの 狒々 狒々

352

141