
【九頭竜坂漆刃】
前回のあらすじ。
女子中学校へ侵入し情報を集めつつ
学園生活を送り、だいたい3か月程の時が過ぎた……
「それじゃあ麗(うるは)ちゃん、またね。」
「……あ、はい……また……。」
学校からの帰り道
まともに目も合わせらず
名前どころか顔も覚えられないクラスメイトに会釈をして
そのまま寮まで歩いて行く
──学生寮 自室。
「……だ、だめだ……。手がかりが足りない……。」
九頭竜坂漆刃、あらため麗(うるは)は途方に暮れていた。
ちなみに麗とは自己紹介の時に女性らしさを出さねば、と
慌てて当て字を自分の名前に使った結果であった。
白い髪の毛をベッドに流すようにして仰向けになり天井を眺めている。
身を包んでいる女子の制服のおかげで他人が見れば儚げに悩む少女のようにみえるかもしれない。
「時折、生徒が消える。けれど痕跡もなく、犯人の当てもない。
近所の街で不審者を見かけたという情報もない……
むしろ近辺は警備が行き届いて、平和そのもの……かぁ……
分かっているのはこの学校の生徒が狙われている、ということくらい……。
情報が無さ過ぎて事件へ発展すらしていない……
そもそも存在が薄れていくように居なくなった生徒への関心が薄れていっている……」
情報提供を求めても、反応が薄く、警察沙汰にもならないのは
警察へ被害届が行くことがほとんどない、という事
……というのが今、実際手に入れた情報と、推察。
怪異の仕業である、とすればしっくりくる。
存在を奪う怪異。
烏内部の怪異討伐の報告書なども読み漁ってみたが
ありがち、と言えばありがちなタイプであり
過去数度、似たような事をしでかした怪異は討伐されている
ただ、どれも共通して正体が掴みにくい、という点が厄介であった。
「どうやら、早速行き詰っているようだな九頭竜坂漆刃。」
声の主は、窓の向こう。木の枝にとまった烏であった。
「あっ、ひゃ、はいっ!
……申し訳ございません。力不足であります……」
慌てて飛び起きると、窓の方へ向かい正座。
叱られている子供のような勢いで合った。
烏は、と言えばそのままそれをどうこう言うつもりもないらしく
窓の向こうより更に言葉を告げていく。
「ならば、九頭竜坂漆刃。足りぬ分の力を高めよ。
そも、お前の特筆すべき才能は、氷の魔術などではない。
その身を自由に変え、如何なる場へも適応する転身である。
さて……。烏の群れに紛れるには烏になれば良い。
しからば、女子の群れに紛れるには。
その身、心。応じた姿へと転じて見せよ。
そうさな。それを成せば、お前がそれで今まで入れなかった場所を探ってみればよい。」
よい、とは簡単に言われてしまったが……
転身もまだ出来るかも分からない上に
それは成功したら更衣室などの立ち入らなかった場所
「も、もしもバレたら怒られますよ……?」
「そもそも女装して潜入してる時点でバレたら怒られるどころか
それ以上のことになるだろうね。
ならばいっそ転身してしまったほうがバレないと思うよ、私はね。うん、とてもいいと思う。」
なんだかよくわからないけれど、とても、押しが、強い。
「スゥーーー……あの……もしかして先生がそれを見たいだけ、とかじゃ──」
「おっと、いけない、そろそろ戻って他の生徒の様子を眺めに行かないといけない時間だったそれじゃあ精進しろよ九頭竜坂漆刃。」
ものすごい早口で言うだけ言って去っていった忍術の先生。
あの人、もちろん凄腕のくノ一だし尊敬してるんだけれども。
やっぱり所々おかしい気がする、気のせいかな?
「……言ってることは滅茶苦茶だけど、結局手がかりを得るにはやるしか……ないんだ……。」
──転身の術。
心 技 体のうち、身体を変化させる術。
初歩の初歩として。
烏へ転身するために何度も練習して覚えた術。
今では、自分の得意、といっても過言じゃない術。
勿論、烏以外へも転身は可能であり、犬や猫、スズメのような小さい鳥にも今は変化できる。
最早、なろうと思ってなれないものなどない。そのくらいには自信がある。
で、あるならば──
「形とは流れるモノ
如何様にでも、変えて、染まり──
如何様にでも、紛れて、生きる──」
これは呪文の詠唱──ではない。
転身の術を覚えたときに先生から教わったコトワリ。
「即ち、それは──
万物流転。」
瞳を閉じて、強く、想う。
女性としての成り立ち、体のつくり。
授業として既に。
生体の図形は頭の中へ叩き込まれている。
なれば、転身を以てそれは為される──
「……あんまし変わって無い気がする……」
その形と姿を見て 心よりの声が漏れるのだった──。
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〈 To BE CONTINUED…//// |
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[822 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[375 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[396 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[117 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[185 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
アンドリュウ
紫の瞳、金髪ドレッドヘア。
体格の良い気さくなお兄さん。
料理好き、エプロン姿が何か似合っている。
ロジエッタ
水色の瞳、菫色の長髪。
大人しそうな小さな女の子。
黒いドレスを身につけ、男の子の人形を大事そうに抱えている。
エディアン
プラチナブロンドヘアに紫の瞳。
緑のタートルネックにジーンズ。眼鏡をかけている。
長い髪は適当なところで雑に結んである。
白南海
黒い短髪に切れ長の目、青い瞳。
白スーツに黒Yシャツを襟を立てて着ている。
青色レンズの色付き眼鏡をしている。
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アンドリュウ 「ヘーイ!皆さんオゲンキですかー!!」 |
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ロジエッタ 「チャット・・・・・できた。・・・ん、あれ・・・?」 |
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エディアン 「あらあら賑やかですねぇ!!」 |
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白南海 「・・・ンだこりゃ。既に退室してぇんだが、おい。」 |
チャット画面に映る、4人の姿。
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ロジエッタ 「ぁ・・・ぅ・・・・・初めまして。」 |
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アンドリュウ 「はーじめまして!!アンドウリュウいいまーすっ!!」 |
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エディアン 「はーじめまして!エディアンカーグいいまーすっ!!」 |
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白南海 「ロストのおふたりですか。いきなり何用です?」 |
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アンドリュウ 「用・・・用・・・・・そうですねー・・・」 |
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アンドリュウ 「・・・特にないでーす!!」 |
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ロジエッタ 「私も別に・・・・・ ・・・ ・・・暇だったから。」 |
少しの間、無音となる。
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エディアン 「えぇえぇ!暇ですよねー!!いいんですよーそれでー。」 |
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ロジエッタ 「・・・・・なんか、いい匂いする。」 |
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エディアン 「ん・・・?そういえばほんのりと甘い香りがしますねぇ。」 |
くんくんと匂いを嗅ぐふたり。
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アンドリュウ 「それはわたくしでございますなぁ! さっきまで少しCookingしていたのです!」 |
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エディアン 「・・・!!もしかして甘いものですかーっ!!?」 |
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アンドリュウ 「Yes!ほおぼねとろけるスイーツ!!」 |
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ロジエッタ 「貴方が・・・?美味しく作れるのかしら。」 |
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アンドリュウ 「自信はございまーす!お店、出したいくらいですよー?」 |
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ロジエッタ 「プロじゃないのね・・・素人の作るものなんて自己満足レベルでしょう?」 |
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アンドリュウ 「ムムム・・・・・厳しいおじょーさん。」 |
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アンドリュウ 「でしたら勝負でーすっ!! わたくしのスイーツ、食べ残せるものなら食べ残してごらんなさーい!」 |
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エディアン 「・・・・・!!」 |
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エディアン 「た、確かに疑わしい!素人ですものね!!!! それは私も審査しますよぉー!!・・・審査しないとですよッ!!」 |
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アンドリュウ 「かかってこいでーす! ・・・ともあれ材料集まんないとでーすねー!!」 |
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ロジエッタ 「大した自信ですね。私の舌を満足させるのは難しいですわよ。 何せ私の家で出されるデザートといえば――」 |
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エディアン 「皆さん急務ですよこれは!急務ですッ!! ハザマはスイーツ提供がやたらと期待できちゃいますねぇ!!」 |
3人の様子を遠目に眺める白南海。
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白南海 「まぁ甘いもんの話ばっか、飽きないっすねぇ。 ・・・そもそも毎時強制のわりに、案内することなんてそんな無ぇっつぅ・・・な。」 |
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白南海 「・・・・・物騒な情報はノーセンキューですがね。ほんと。」 |
チャットが閉じられる――