［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

　三十六時間と定められたこの世界の戦争も、もう四分の一が過ぎたらしい。
　拠点に戻る前に俺は変身を一旦解き、「卯島渉」として可能な限り安否報告を済ませてしまうことにした。

「さて……誰もいないよな」
「おうおう、俺が特別に見ててやるからさっさとやるコトやっちまいナァ、だジョー」

　赤黒い空に浮かぶログイン画面に意識を集中させ、Cross+Rose──ハザマで使えるチャット機能だ──を起動させる。
　この世界に来てから、俺を心配した通信がいくつか寄せられていた。俺はそれらが届く度に「因幡うさ子」のまま応対して、なんとか誤魔化してきている。できる限り「卯島渉」として返事しておきたい。
　だって、「因幡うさ子」と「卯島渉」は別物だ。うさ子はヒーローであるべきで、社会の底辺たる雑魚悪党と同じにしてはならない。……ばれると俺が可憐な少女を全力で演じてる事実まで露見してしまう居た堪れなさも少なからずあるが。
　ともあれ、できるだけ俺本人から連絡した方が余計な心配は掛けずに済むだろう。移動の都合も加味すると時間はそう多くないからできて一、二人くらいだろうか。
　莉稲にも知らせておきたいところだが、如何せん俺と彼女の距離が近いので通信中もしくはその前後に生身で鉢合わせる可能性がある。

「……いや」

　俺より自分のことを気にかけてほしいし、本当は俺なんか忘れてもらった方がいい。
　しかし彼女はそうすることを良しとしないのだろうなと思いながら、通信先に『汐見莉稲』を指定した。

「もしもし。莉稲、大丈夫か？」

　チャットをVRモードから音声通話に切り替えて待つ。できるだけ用件は手短に。
　ややあって向こうから応答が入った。

「わーくん……！？　わーくん、わーくんこそ大丈夫！？　心配して探してたんだよ〜」

　言葉相応に心配そうな彼女の声に良心がちくりと痛む。どうしたって、彼女は俺を気に掛けてしまうのだろうか。

「急に訳わかんねェ目に遭わされてるけど、なンとかうまく凌げてる。力を貸してくれる人が居たんだ。で、連絡取る余裕ができたから繋いだ」
「そっかあ……。わたしもね、平気だよ。ここで会った子達とあちこち行きながら、わーくんのこと探してたの」
「そうか。そっちにも味方が居たなら良かった。余裕があればそっちに行く。こっちは大丈夫だから自分を優先しろ。俺のことは気にすンな」

　まったくもって白々しい。自分の口を塞いでしまいたくなる。卯島渉という人間を忘れてほしいと思いながら、期待を持たせるようなことを宣っている。

「そろそろ移動するから切るぞ」
「あ、待って。最後に。わーくん、無理しなくて大丈夫だからね。つらい時はいつでも言っていいからね」

　彼女はいつも、俺を見透かしたような発言をする。その意図がどこに向けたものであれ、嘘に塗れて深く沈んだ俺を的確に射抜くのだ。

「……うん！　切って大丈夫〜！　声、聞けて良かったよ〜！」
「おう。……気ィつけろよ、莉稲」

　静かに接続を断つ。これで莉稲は安心してくれるだろうか。いや、そうは思えない。彼女はこの世界に俺がいる確信を得て、新たな不安を抱えるかもしれない。

「……結局俺が悩んでんのな」

　彼女にこそ無理をしてほしくない。
　そんな俺のコンタクトは、望みが少しは叶う方向に舵を切れたのだろうか。

「自分を優先するべき状況で俺を探さなくたっていいのにな。鰐淵さんもそう思うだろ？」
「るせェ。ソレがあの嬢ちゃんのやりてェコトなンだからケチ付けてンじゃねェ。嘘ついて誤魔化し続けてるお前よりずっと立派だジョー」

　鰐淵さんは思ったより辛辣に否定した。
　俺だって、莉稲の心がわからないわけではないのだ。縁近い誰かが危険な目に遭ってるなら安否を気にかけて当然で、彼女は異能がない筈の俺を一際心配している。
　ここで扱える「因幡うさ子」の変身能力は鰐淵さんから借りた力だ。彼が承認しないことには変身現象も起こらないと聞いている。

「でも鰐淵さんって莉稲がうちに来てる時は大人しいし、今のところうさ子の正体バラしたりもしないでいてくれるよな」
「勘違いすンなよ。気ィ遣ってやってンのは俺の力の名誉のためだジョー。俺ァテメーなンか大嫌いだ」
「嫌いって……。じゃ、それならどうして力を貸してくれンだよ？」

　好かれてないことは勘づいていたが、面と向かって個人的な感情をぶつけられるのも戸惑うものがある。嫌いなくせに悪人であると知っていてこんな力を貸すのなら酔狂もいいところだ。
　なぜ俺のことを知っているのかもわからない。考えてみれば、この鮫もハザマに来る前から正体に謎しかなかった。
　気の抜けるサメのぬいぐるみの姿も、俺に力を貸した代償だと言うし。
　しかし、よくよく思い返すと初めに出会った時からぬいぐるみだった。既に俺に力を貸していたということになるのだろうか。嫌っていたのに？

「でけェ貸し作っておきゃァ、お前も悪さできなくなンだろ。そうすりゃお前は真人間に戻って世界平和に一歩近づくってェ寸法よ！」
「あのなあ。そう簡単なハナシじゃねえよ、俺のは」
「少なくともうさ子のままなら詐欺はできねェし、野上の指示や金融周りの煩雑さも無視できるぜェ？　だジョー」

　野上。それは、俺が所属する特殊詐欺グループの先輩にあたる人物の名前だった。

「アンタ、マジで俺のことどこまで知って……？」
「ほらほら時間無くなるジョー、やることやっちまえ。次は誰と話すンだ？」
「くそ、またはぐらかされた……」

　次の挨拶相手を選びながら、俺は鰐淵さんの正体と、撒いた種を片付けきれない自分の手際の悪さに頭の過半数を占拠されていた。

ENo.541 マテバ とのやりとり


ENo.545 東堂玄樹 とのやりとり


ENo.719 ケムルス とのやりとり


ENo.789 無名 とのやりとり


ENo.880 オバチャン とのやりとり


ENo.1033 斎 とのやりとり

ケムルス(719) から 楔石 を手渡しされました。

解析LV を 5 DOWN。（LV10⇒5、+5CP、-5FP）

自然LV を 5 UP！（LV0⇒5、-5CP）
領域LV を 5 UP！（LV0⇒5、-5CP）
防具LV を 5 UP！（LV60⇒65、-5CP）

ナキドリ(516) の持つ ItemNo.24 毒鉄鉱 から防具『なんかすごい気を発している石』を作製しました！

サキ(768) により ItemNo.7 桜 から装飾『護りのメガネ』を作製してもらいました！
　⇒ 護りのメガネ／装飾：強さ187／［効果1］舞護15 ［効果2］－ ［効果3］－

イザヤ(585) により ItemNo.17 たけのこ から料理『里のチョコレート菓子』をつくってもらいました！
　⇒ 美酒佳肴！［ 3 3 5 = 11 ］成功！料理の付加効果のLVが増加！
　⇒ 里のチョコレート菓子／料理：強さ90／［効果1］貫撃13 ［効果2］器用13 ［効果3］深手27

ケムルス(719) により ItemNo.19 翌檜ノ蒲ノ穂 に ItemNo.12 駄木 を付加してもらいました！
　⇒ 翌檜ノ蒲ノ穂／武器：強さ175／［効果1］器用25 ［効果2］攻撃10 ［効果3］－【射程1】

ケムルス(719) により ItemNo.7 護りのメガネ に ItemNo.21 楔石 を付加してもらいました！
　⇒ 護りのメガネ／装飾：強さ187／［効果1］舞護15 ［効果2］復活15 ［効果3］－

竹取の翁(1391) とカードを交換しました！

凄いやばい竹 （インファイト）


ダウンフォール を研究しました！（深度1⇒2）
プチメテオカード を研究しました！（深度0⇒1）
プチメテオカード を研究しました！（深度1⇒2）

ストーンブラスト を習得！
アイアンナックル を習得！
コンテイン を習得！
レッドアゲート を習得！
リフレッシュ を習得！
アマゾナイト を習得！
ノーマライズ を習得！
プチメテオカード を習得！
ピュリフィケーション を習得！
瑞星 を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

うさ子(266) は ボロ毛布 を入手！
ナキドリ(516) は 栄養ドリンク を入手！
ケムルス(719) は タイヤ片 を入手！
サキ(768) は ボロ毛布 を入手！
ケムルス(719) は 赤い薔薇 を入手！
ケムルス(719) は ビーフ を入手！
うさ子(266) は 赤い薔薇 を入手！
ナキドリ(516) は 不思議な食材 を入手！
ケムルス(719) は ビーフ を入手！
うさ子(266) は 何か柔らかい物体 を入手！

カミセイ区 D-12（道路）に移動！（体調7⇒6）
カミセイ区 E-12（森林）に移動！（体調6⇒5）
カミセイ区 F-12（森林）に移動！（体調5⇒4）
カミセイ区 F-11（チェックポイント）に移動！（体調4⇒3）
チナミ区 D-2（ベースキャンプ）に戻りました！
体調が全回復しました！

『チナミ区 H-16：チェックポイント《瓦礫の山》』へ採集に向かうことにしました！
　　 - うさ子(266) の選択は チナミ区 H-16：チェックポイント《瓦礫の山》

MISSION!!
カミセイ区 F-11：チェックポイント《商店街》 が発生！
　　 - うさ子(266) が経由した カミセイ区 F-11：チェックポイント《商店街》
　　 - ナキドリ(516) が経由した カミセイ区 F-11：チェックポイント《商店街》
　　 - ケムルス(719) が経由した カミセイ区 F-11：チェックポイント《商店街》
　　 - サキ(768) が経由した カミセイ区 F-11：チェックポイント《商店街》

［822 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［375 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［396 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［117 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［185 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　










　





チャット画面に映る、４人の姿。

　

　






　







少しの間、無音となる。

　






くんくんと匂いを嗅ぐふたり。
















　

　

　

３人の様子を遠目に眺める白南海。





　

　

　

チャットが閉じられる――

チェックポイント。

仄かな光に包まれた六角形の柱が立っている。

　

･･･柱から滲み出るように、何かが生み出される。



　




それは言葉を発すると共に襲いかかる！




（初発生のイベント戦：異能FP+5！生産FP+5！）