
―― 2020.5.30
■検体Cへの精神干渉
精神が複雑化している一方、精神と神が同一化しているからか、随分と精神干渉に弱い。精神が弱いというよりも、精神がむき出しになっているという感覚の方が強い。自分は同調する力だが、あちらはむき出しになった精神が影響を受けやすく、同時に振り回されやすいと推測される。神であるが故に感情や信仰の影響を受けやすい点も一つの理由か。
(あくまでむき出しになっている は比喩であるため実際はむき出しになってはいない)
■検体Cの身体の再生の不備
前回感じた違和感を調べるため、検体Cに許可を得て調べさせてもらった。
一つ、痛覚に慣れすぎている。多少の怪我なら痛みを感じず、人が声を漏らす程度の痛みでようやく痛みを感知できる程には鈍いようだ。痛覚の暗示を『骨折レベル』にしてようやく人の『切り傷』程度に認識した。かなり鈍いといっていいだろう。
もう一つ、やはり神を降ろしている身であるため、治りきる前に怪我をする、あるいは後遺症が残りかねない怪我を負えば完全に再生はされず、歪な状態で完治したと判定される。携帯のバッテリーのようなものを想像すればわかりやすいか。
どこまで影響が出ているのかは分からないが、確実に子供は産むことができない身体となっている。
―― まあ その頃には彼女はイバラシティには居ないだろうから関係のない話なのだが
思えば、初めて相手の声を聞くことで、相手の心と己の心を同じにする『同調』の力を得たときは、耳を開いたときと比べてもっと酷いものだった。頭痛と昏睡だけでは収まらない。発熱、嘔吐、情緒不安定などの体調不良に加え、暫く複数人の声を聞くことさえも不可能という状態に陥った。
あの時と比べて、制御が可能になったと言う事だろうか。己の心を強く持ち、決して己が他に影響を受けないようにできるようになってから、随分と楽になった気がする。
違う。耳を塞いだから。
■■■の中でも異常な力。確かに己が望んで改変させたもの。それ故に、異質に見られることは少なくはない。とはいえ、比較的理解のある世界でよかったと思う。この世界でも、異能が当たり前のお陰か不自由なく暮らせている。
己の悲鳴に、耳を閉ざしたから。
検体Cに勧められた神父は、随分と優しい人だった。胸の内を吐き出して、楽になった。楽になったよね?楽になったはずだ。笑っていなければいけない点に気づかれるとは思っていなかった。指にも触れられたが、深く追求されなかったことは幸いだった。相談できる人が増えたのは有難い。うっかり『ツワォツ』であることを話しかねないのが難点だが。
楽になれるものか。何も解決していないのだから。
―― 『とある海巫女の手帳』より
著 ツワォツ・エトパァイエ
「不気味なのよ!いっつもにこにこして!」
うん。ごめんね。笑っていないと負の精神干渉を行っちゃうから。
「しかもあんた、人の心が読めるんでしょ!?誰が何考えてるか全部わかっちゃうんでしょ!?」
ちょっと違うよ。感情と真偽と、それから心の声と。だから、そのとき考えていないことまでは分からないよ。
「あんたなんかに守られたくない!さっさと殺されちゃえばいいんだ!」
「ちょっとやめなよ!聞きたくて聞いてるわけじゃないんだよ!?」
「そーだそーだ!お前、こいつに守られてんだぞ!?それでそんな口聞くのかよ!?」
―― あぁ、そっか。この人たちは、いい人なんだ。
裏表がなくって、怖いから怖いと言って。読まれたくないから遠ざけようとしてる。
怖い 「あんたたちはどう思ってんの?」
嫌だ
可哀想だから
助けなきゃ
「なになにー、なんの騒ぎ?」
これも読まれてる? 聞こえてる?
怖い 「怖いはずないでしょう!?」
怖い この人は本当はいい人だから 「ほら最近学校こなかったあの子」
怖いなんて思っちゃだめ 怖い 聞かれちゃう
「あんたたちは考えたことないの!?ツワォツは人の心を聞くだけじゃない!心をいじくりまわすことだってできるのよ!そうして助けたいって思う心も!可哀想って思う心も!敵視できないって心も!
全部、そうさせられてるからかもしれないのよ!?」
「――――、」
「…………」
たった一言だけ、そうだねと口にした。
ひぃ、と、怖がる声が聞こえた。
あぁ、あぁ、怖がらないで。大丈夫だよ。許可を得ない精神干渉はやらないから。
だから、ねぇ、笑ってよ。
……うん。難しいよね。それじゃあ、ボクが頑張るね。
だって。聞こえちゃうから。
同じになっちゃうから。
その辛さが、よくわかるから。
だから今日も、ボクは笑って日々を過ごす。
そうすれば、ボクから誰かを傷つけることはないから。
―― あれ、こんな記憶、あったっけ
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ちわわ 「思ったんだけどさあ。あたしにおいなり、いたちが来たってことは『しがらき』も来てんのかな。」 |
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おいなり 「そういえばしがらき様はまだ見ておりませんね。……影響力が低い者はナレハテと化すると聞きました。ナレハテになられていなければよいのですが。」 |
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ちわわ 「大丈夫だろ。あのしがらきだぜ?あたしらん中じゃ、いっちゃん狡賢いしそんなヘマするやつじゃねぇしよ。そいや、しがらきはイバラシティで見かけてねぇけどいんのか?」 |
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おいなり 「 」 |
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いたち 「 」 |
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ちわわ 「えっ、何その顔。何があったの?え、怖いんだけど。」 |
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おいなり 「あの方も……残念ながら、イバラシティの洗礼を、受けておりますので……」 |
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いたち 「いや、でも、まだ……しがらきさんは……マシだったよ……?うん。しがらきさんは……私たちよりは、マシ……」 |
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ちわわ 「マシなのか。あくまでマシなだけなのか。虚無になる程度にゃ洗礼を受けてんのか。なにそれ怖い。やっぱイバラシティ怖ぇよ。なんで?何で皆あんなとこに居座ろうとすんの?あっちのあたしもだけどさぁ。ねぇ。なんで?どうして?ほわい???」 |
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おいなり 「と、とにかくです。わたくしはしがらき様が元気でやっていらっしゃることに1000QPです。」 |
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ちわわ 「ん、じゃああたしゃナレハテになってやってきてあたしらをびっくりさせに来るに1000sp。」 |
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いたち 「えっ、じゃあ私は……突然1人増えてたって思ったらしがらきさんでしたってオチに1000ベル。」 |
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ちわわ 「いや単位おかしーだろ!?同じ1000でも全然価値ちげぇよ!!」 |
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いたち 「おいなり様のそれ何ができるの。少なすぎなんだけど。」 |
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おいなり 「逆にちわわ様のそれは一仕事終えた、それもかなり割のいいやつじゃないですか。」 |
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ちわわ 「いたちは微妙だな……光る地面一回分かぁ。うーん。うーーーん???」 |
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いたち 「しょうがない。カブにしよう。」 |
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おいなり 「仮に儲けられたとして雀の涙の儲け――」 |

[816 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[370 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[367 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[104 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[147 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
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白南海 「・・・・・・・・・」 |
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エディアン 「・・・・・・・・」 |
白南海
黒い短髪に切れ長の目、青い瞳。
白スーツに黒Yシャツを襟を立てて着ている。
青色レンズの色付き眼鏡をしている。
エディアン
プラチナブロンドヘアに紫の瞳。
緑のタートルネックにジーンズ。眼鏡をかけている。
長い髪は適当なところで雑に結んである。
チャット画面にふたりの姿が映る。
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白南海 「・・・・・・・・・」 |
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エディアン 「・・・・・・・・」 |
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白南海 「・・・怖いだろうがよ。」 |
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エディアン 「・・・勘弁してくれませんか。」 |
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白南海 「ナレハテってあの!アレだろォッ!!?ドッロドロしてんじゃねーっすか!! なんすかあれキッモいのッ!!うげぇぇぇぇうげえええぇぇぇ!!!!!!」 |
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エディアン 「私だって嫌ですよあんなの・・・・・ ・・・え、案内役って影響力どういう扱いに・・・??私達は関係ないですよね・・・????」 |
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白南海 「あんたアンジニティならそーゆーの平気じゃねーんすか? 何かアンジニティってそういう、変な、キモいの多いんじゃ?」 |
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エディアン 「こんな麗しき乙女を前に、ド偏見を撒き散らさないでくれます? 貴方こそ、アレな業界の人間なら似たようなの見慣れてるでしょうに。」 |
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白南海 「あいにくウチはキレイなお仕事しかしてないもんで。えぇ、本当にキレイなもんで。」 |
ドライバーさんから伝えられた内容に動揺している様子のふたり。
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白南海 「・・・っつーか、あれ本当にドライバーのオヤジっすか?何か雰囲気違くねぇ・・・??」 |
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エディアン 「まぁ別の何か、でしょうね。 雰囲気も言ってることも別人みたいでしたし。普通に、スワップ発動者さん?・・・うーん。」 |
ザザッ――
チャットに雑音が混じる・・・
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エディアン 「・・・・・?なんでしょう、何か変な雑音が。」 |
ザザッ――
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白南海 「ただの故障じゃねーっすか。」 |
ザザッ――
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声 「――・・・レーション、ヒノデコーポレーション。 襲撃に・・・・・・・・いる・・・ 大量・・・・・こ・・・・・・死体・・・・・・ゾ・・・・・・」 |
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声 「・・・・・ゾンビだッ!!!!助け――」 |
ザザッ――
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白南海 「・・・・・・・・・」 |
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エディアン 「・・・・・・・・・」 |
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白南海 「ホラーはぁぁ――ッ!!!!
やぁぁめろォォ―――ッ!!!!」 |
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エディアン 「勘弁してください勘弁してくださいマジ勘弁してください。 ホラーはプレイしないんですコメ付き実況でしか見れないんですやめてください。」 |
チャットが閉じられる――