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金色の系譜 - 敗走編 - Chapter 2 セタリア
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これは僕の故郷における、創藍高校ではない高校の入学式。
僕はこの日高校生になった。
いろんな中学から生徒が来るせいか、初めて見る顔が多い。
とはいえ、それは想定内だった。
せっかく高校に入ったからには、ひとりで絵ばかり描くのではなく、
友達を作って、青春を桜花するなどしたかった。
中学の頃まではなるべく人付き合いを避けてきたから、変わりたい思いがあった。
そのためには、知らない顔は多い方がいい。
その方が、新しい気持ちで高校生活を送ることができる。
しかし、その中でとてつもなく見慣れた顔がひとつあった。
僕ははじめて、彼女と同じ学校になった。
正直、初日の時点でなんだか嫌になっていた。
高校生活が楽しいと思えそうになかった。
将来が心配だからここにいたいとは思う。
でも、正直勉強はあまり好きじゃない。
今日初めて話しかけた幼馴染も、喋るとますます変な奴だった。
それ以外に会話をしたいと思う相手もいなかった。
もうはやく帰って絵を描きたい気持ちでいっぱいになる頃……
後ろを振り向くと、瀬奈が変な絡まれ方をしていた。
よく知らない同級生っぽい人が、瀬奈のスケッチブックを勝手に見ている。
正直、見ていられなかった。
ああいうのを見るとだんだん胃が痛くなってくる。
はやく帰りたい気持ちでいっぱいだけど。
でも、それよりも……
何かの拍子に『アレ』を汚されるのはもっと嫌だった。
アレには、僕が好ましいと思う作品が詰まっている。
作者の性格とか態度とかそういうのはともかく……
あのスケッチブックだけは死守したい。
ようやく、僕は自分の犯した過ちを知ることになる……
僕がひどくむせたとき、笑われたり、馬鹿にされるんじゃないかと、なんとなくそう思っていた。
昔から、物事がうまくできないとき、たびたびそうして傷ついてきたからだ。
不良御曹司は笑わなかった。
どう考えても悪い人だけど、たぶん悪い人ではない。
自分でも何を言っているのかわからないけど、そういう感じの人。
瀬奈についての問題は何一つ解決してないけど、
空に浮かんで消える煙みたいに……ほんの少しだけ……心が軽くなった気がしたんだ。
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→ Next chapter 地獄
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[770 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[336 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[145 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[31 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
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白南海 「うんうん、順調じゃねーっすか。 あとやっぱうるせーのは居ねぇほうが断然いいっすね。」 |
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白南海 「いいから早くこれ終わって若に会いたいっすねぇまったく。 もう世界がどうなろうと一緒に歩んでいきやしょうワカァァ――」 |
カオリ
黒髪のサイドテールに赤い瞳、橙色の着物の少女。
カグハと瓜二つの顔をしている。
カグハ
黒髪のサイドテールに赤い瞳、桃色の着物の少女。
カオリと瓜二つの顔をしている。
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カグハ 「・・・わ、変なひとだ。」 |
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カオリ 「ちぃーっす!!」 |
チャット画面に映し出されるふたり。
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白南海 「――ん、んんッ・・・・・ ・・・なんすか。 お前らは・・・あぁ、梅楽園の団子むすめっこか。」 |
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カオリ 「チャットにいたからお邪魔してみようかなって!ごあいさつ!!」 |
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カグハ 「ちぃーっす。」 |
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白南海 「勝手に人の部屋に入るもんじゃねぇぞ、ガキンチョ。」 |
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カオリ 「勝手って、みんなに発信してるじゃんこのチャット。」 |
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カグハ 「・・・寂しがりや?」 |
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白南海 「・・・そ、操作ミスってたのか。クソ。・・・クソ。」 |
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白南海 「そういや、お前らは・・・・・ロストじゃねぇんよなぁ?」 |
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カグハ 「違うよー。」 |
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カオリ 「私はイバラシティ生まれのイバラシティ育ち!」 |
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白南海 「・・・・・は?なんだこっち側かよ。 だったらアンジニティ側に団子渡すなっての。イバラシティがどうなってもいいのか?」 |
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カオリ 「あ、・・・・・んー、・・・それがそれが。カグハちゃんは、アンジニティ側なの。」 |
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カグハ 「・・・・・」 |
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白南海 「なんだそりゃ。ガキのくせに、破滅願望でもあんのか?」 |
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カグハ 「・・・・・その・・・」 |
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カオリ 「うーあーやめやめ!帰ろうカグハちゃん!!」 |
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カオリ 「とにかく私たちは能力を使ってお団子を作ることにしたの! ロストのことは偶然そうなっただけだしっ!!」 |
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カグハ 「・・・カオリちゃん、やっぱり私――」 |
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カオリ 「そ、それじゃーね!バイビーン!!」 |
チャットから消えるふたり。
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白南海 「・・・・・ま、別にいいんすけどね。事情はそれぞれ、あるわな。」 |
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白南海 「でも何も、あんな子供を巻き込むことぁねぇだろ。なぁ主催者さんよ・・・」 |
チャットが閉じられる――