
最初に出会ったの"腐れ縁"のヘンテコ女だった。
相変わらず頓珍漢な事を言う奴だが、これほど心強い味方も居なかった。
コイツとはヘンな所で気が合う。初めて対峙したアンジニティの連中も、コイツのおかげでなんとかなった。
暗闇を一筋のライトが切り裂いた────。
次に出会ったのは、"奇妙な"ダチだった。
何時であったかは覚えていない。けど、なんだか妙に懐かれた。
悪友という言葉が似合う。変な奴だけど、此奴といると気兼ねない。
黒光りするタイヤが水飛沫を上げて濡れたアスファルトを駆け抜ける────。
最後に出会ったのは、"学校の"後輩だった。
卒業した母校の、なんだか自信なさげの物静かな奴。
コイツもダチだ。だから一緒に戦ってくれる。
俺が先輩だから、護ってやらねぇと。
豪雨にライトの光が乱反射し、赤と黒の車体が正体を現した────。
自分の考えに賛同してくれた大切なダチだ。
コイツ等以外にも、沢山の奴と協力する事になった。
どいつもこいつもちぃとクセがありそうだが、悪い奴等じゃない。見知った顔がいる。
勿論、男に二言はない。言った事に"スジ"は通すが、不安がないわけじゃなかった。
けど、これだけ人数がいりゃ大丈夫だろう。集まった仲間
ガシャァンッ!!
────赤黒の車体が重なった。
ベチャッ!!
……酷く焦げ臭い臭いが鼻を衝く。ぼやけた視界が徐々に鮮明になってきた。
辺り一面にぶちまけられたガソリンが燃え広がり、夜の車道を明るく照らしていた。
スクラップ同然になった車体は燃え広がり、其処に転がるのは先ほどまで仲間"だった"もの。
焼け焦げ、欠損し、そこら中に飛び散った鮮血が辺り一面を赤黒く染めている。
雨の匂いじゃ隠しきれない激臭に嘔吐き、濡れたアスファルトに膝をついた。冷たい雨の感覚が嫌に強く感じる。
激しいショックに頭が追い付かない。全身の体液が、雨に紛れて噴き出していくのを感じる。
水たまりに映ったのは酷く引きつった表情だ。その両隣に、血塗れの男女の姿が見えた。
これは罰だ。
……何の罰だ?
お前が傷つけた。多くの血を流した罪を、お前が大事にする血贖わせる。
何を……?
殺さなければそれでいいのか?
同じ"悪"ならどれだけ血を流してもいいのか?
人に与えた"痛み"も知らなかった。
こうでもしなきゃ、わからなかった。
誰が……!?
誰……?
お前だよォ……
矢
車
エ
リ
カ
ァ
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エリカ 「…ッ!?今のは……?」 |
急に脳が揺さぶられた感触がした。
ぼやける視界が、徐々に鮮明に変わっていく。
そこに広がるのは、荒廃した大地。もう、見慣れてしまったハザマの光景。
今一はっきりしない、ぼやけた頭を左右に振った。
妙に頭の中がスッキリしない。だが、妙な吐き気がする。
息をする度に、鼻腔に残った"ガソリンの臭い"が更に吐き気を加速させた。
思わず、口元を手で押さえてしまう。
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エリカ 「…………。」 |
あれは間違いなく思い出したくない記憶の一つだった。と、思う。
今でも覚えている。思い出せる。今での残ってるこの臭い。
確かに、後ろに自分の両親が立っていた気がする。
だが、それ以上に凄惨な光景が────…。
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蛇 「ヒヒッ。ハザマでうたた寝たァ、随分度胸がついたじゃねェか。エエ?ボウズゥ。」 |
記憶を手繰る前に、深いな声に邪魔された。
思わず顔を顰めてしまう。
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エリカ 「……ウルセェ、マジで寝てたのか、俺。」 |
…今は気に入らない蛇の声音にも、怒鳴る気分すらなれない。
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蛇 「そら、爆睡よ。ホレ、向こうでお仲間が呼んでたぜェ?」 |
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エリカ 「……わかッてる、すぐ行く。……ア"ー……気持ち悪……。」 |
少し振り返れば、そこには同じ"はみ出し者達"の姿が見えた。
……今はもういいだろう。気持ちを切り替えよう。
脳裏にこびり付いた悪夢を振り払うように、踵を返した。
その姿を、取り巻く蛇の口元だけがせせら笑う────。