
──あはっ!
ねえ いますこし動いたでしょう。
わかるよ。僕にはわかる。わかるんだ。
ふふ、くすぐったい。
くすぐったいよ。
どうしたの?何かあったの?
もしかして、また合間見えた世界の何かかなあ。
……どっちでも、いいけどさあ。
ああ
あぁ。よかったあ。
やっぱり、君はちゃんと、ここに居るんだね。
……ううん。ううん。わかってるよ。わかってたよ、もちろん。
でもねえ。
時々ね。時々だよ。僕も、寂しくなっちゃうから。
君の事感じられたら、やっぱり嬉しくなっちゃうんだよ。
──ねえ。
聞いてくれるかなあ。
君はね。君は 僕なんだ。
僕はね 君がいてくれたから
僕の意味を見つけることが出来たんだ。
だからね、君は、僕なんだ。
……僕は
僕はね、それまで。
どうして、生きたのか
どうして、死んだのか
何にも。何にも。見つけられないままでいたんだ。
君に会う事が出来なかったなら ずうっと ずっと そのままだったと思うんだ。
だってさ
だってだよ。
ある日に いきなり 落っことされてさあ。
閉じ込められて 混ぜられてさあ。
地面も、空も、何にもなくて。
あるのは沢山命だけ。
ぐちゃぐちゃ、どろどろ、一緒になって。
ぎゅうぎゅう、ぎちぎち、ひしめき合って。
姿も形もばらばらで。
思いもそれぞれどろどろで。
ああ。
ちょうどね ちょうど
ここに似ている。
だけど、ここよりも、暗いとこ。
僕が居たのは、そんな所。
閉じ込められたは、そんな所。
……わかるかなあ。
わからない、かもねえ。
ううん。違うや。間違ったってさ、わかって欲しくなんてない。
君にそんな思い、してほしくだけない……。
あのね。
──空が、消えたんだ。
初めは、それから。
空が初めに消えたんだ。
僕の上に
僕の下に
みんなが居た
みんな、みんな、生きていたんだ。
ぐちゃぐちゃ、どろどろ、一緒になって。
ぎゅうぎゅう、ぎちぎち、ひしめき合って。
何にも、何にも、わからないまんま。
僕はね
僕たちはね
それから何にもできなくて
ただ、ただ、どうにか生きようとしただけ。
互いに食んで傷つけて
踏みつけ奪って生こうとしただけ
だって
みんな、みんな、死にたくなかった。
それはね、みんな、おもってた。
それはね、みんな、わかってた。
だから、僕はね
僕たちはね
殺したんだ
殺されたんだ
死んだんだ
冷たく腐った肉をだけれど、どうにか食んでは、すすっては。
血だとか、肉とか、排せつ物とか。汚泥にまみれて、それでもどうにか。
最後のひとりに、なるまでずうっと。
……あのね。
最後のひとりは 僕だったんだよ。
その頃にはもう、体中全部痛くって
生きて居るかもわからなくってさあ。
突然、それから、空が戻ったんだ。
空が、痛いくらいまぶしく、急に戻って。
だから、僕はねようやく
あぁ 悪夢が覚めんるだなって、そう、ぼんやりと思っていたんだ。
おもって
おもっていて
おもっていてね。
だけど、そうじゃあなかった。
僕はね
殺されたんだよ
まぶしい空から、するする降りた指先に。
つまみあげられ、潰されて。
あっけなく。
本当に、本当に。
笑っちゃうくらいに、あっけなく────
理由だなんて、わかる訳なかった。
どうしてだなんて、誰に聞けやもしなかった。
だけどね
ただ、ひとつだけ確かな事がそこにはあってね。
みんな、残らず、死んだんだ。
……呪ってやりたい。
呪ってやりたいって。強くに思った。
何もかも。本当に、本当に、何も、何も、何も、何も。
誰も残らず、何も残らず。全て、全て、空も、星も、何も何も
呪い殺してやりたいって。
本当に、本当に思ってた。
だってさ
僕たち 死んだんだ
一体
何のために。
何のために。
何のために。何のために。
何のために。何のために。何のために。
何のために。何のために。何のために。何のために。
何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。
何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。
何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。
何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。
何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。
何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。
何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。
何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。何のために。
────けどね
けれどね
知ったんだ。
何のためにか、知ったんだ。
だって
君を見たから。君に会えたから。
その時ね。僕は
僕は、本当に 本当に
本当にね 本当に 本当に 本当に
──────報われたような 想いがしたんだ。
本当に、本当に、心の底から。心の底からずうっと、ずっと。
何のために生きたんだろうって。
なんのために死んだんだろうって。
全部、全部、その時分かったんだもの。
────君の為にだったんだ って。
だから
だからね、僕は
君を守るって決めたんだよ
君の為に全てをしようって
そう、腹の底から決めたんだよ
決めることが、出来たんだよ
だからね。
君はね、僕なんだ。
君は、君はね、僕なんだ。
僕が理由は君なんだ。
君が、君だけが僕なんだ。
ずうっと、ずうっと、守ってあげるよ。
どこに行っても、かならずね。
──あはっ
だからねえ、瀧本。
僕はね、君の事がね、大好きなんだ
大好きだなんだよ 瀧本。
本当に ほんとうに 心の底から 思いの底から。
大好き。大好き。大好きなんだよ。
だからね
だからさ
ねえ
笑って
笑ってよ、瀧本
ねえ
きみも、わらえよ。