★Main1-01(α)『#01 模倣再演、起動(アクティベート・リアクト)』
────また、あの夢だ。
見知らぬ狐娘が、一方的に話してくる夢。
???
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??? 「────さて、そろそろ私の"記録"のリンクがマシになってきただろうか。」 |
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??? 「本来は初めに言うべき事だがね、"私"に聞き洩らしをされては敵わない。 このメッセージは、予め仕込んでいたこの術式が最低限の起動を確認した時に流れるようにしている」 |
何時ものように、"ソレ"は独り言を続ける。
何時も通り、よくわからない事を言うだけ言ってこの夢は終わる。
そう思っていた、その時。
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??? 「さて、そろそろ本題に入ろうか────"エリス"」 |
────その瞳が、私を捉えた。
キミは……お前は、一体誰なんだ。どうして最近になって夢に出てくる。
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??? 「……やはり記憶は無い、か。承知した」 |
"ソレ"がぱちん、と指を鳴らし、二人の前に紅茶の入ったティーカップが現れる。
勧められるままに恐る恐る一口飲んでみる。……おいしい。
夢の中だというのに、ご丁寧な事で……。
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??? 「────さて、まず自己紹介からしよう」 |
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私は《リアクト》。 アンジニティと呼ばれる世界に居る者、《姿無きエリスロス》……を模倣した者 |
ああ、白南海とかいうヤツが言ってた……。
そのアンジニティ様……モドキ? が、私に何を言いに来たんだ?
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《リアクト》 「端的に言えば、キミは元々はアンジニティなのだ。 《ワールドスワップ》の影響で姿と記憶を摩り替えられた《姿無きエリスロス》、それがキミだ」 |
……俄かには信じられない。
私が造られた存在? 流石に無茶が過ぎる。
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《リアクト》 「だろうな。残念な事に、"この私"が存在している事実を除いて証拠らしい証拠は無い。 キミの反応を見るに、《ワールドスワップ》前に仕込んだ小細工も私以外の全てが失敗だったらしい」 |
────"この私"?
まるで他にも存在していたかのような物言いに引っかかり、聞き返す。
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《リアクト》 「《ワールドスワップ》が実行される前の事だ。 《姿無きエリスロス》は自身をエミュレートする魔法式、《摸倣再演(リアクト)》を自分自身に施した」 |
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記憶の保存、あるいは再解凍とは別の経路として、《記録の再生》というカタチで仕込んでいたフェイルセーフだったが……どうやらこれしか持ちこせなかったらしい |
……やっぱストップ。自己紹介はいい、私にわからん話が多すぎる。
エリスロスがどういう存在なのかなんて、私にはどうでもいい。
話を信じる義理もない。
だが、それでも。
どうしても一つ、聞きたい事があった。
「私は……【七支エリス】は、【姿無きエリスロス】だ……って言ったよね」
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言ったとも |
「それなら、私の【呪い】がどこから来たのか教えて」
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《リアクト》 「成程、やはりキミにとってはそういう扱いになるか……」 |
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────遥か昔。【姿無きエリスロス】が、自分自身に掛けたモノだ |
「ばっ……かじゃないの?! 何でこんな、こんなモノを────?」
────と。
今まで無表情だったリアクトの……『エリスロス』の表情が苦しそうに歪む。
『それを……思い出せないのだよ。
私は、本当に、本当に大切な願いのためにその呪いを課した。
そのはずなのに────なにも、おもいだせない。
私が人間であったという証が、記憶が、祈りが、欠けているのだ』
絞り出すような声。
『キミは仮初の記憶のお陰でだいぶ『人間らしい』状態のようだが、私に残されているのは『今の私』だけだ。
理を越える魔法を振るい、あまつさえ世界の法則にすら介入する能力を備えた『誰か』。それが今の【姿無きエリスロス】』
私は思い出さなければならない。
世の理を越える不滅と化してまで願ったのが何だったのかを。
────私が、人間であったという証を。
★Main1-01(β)『#01 侵略戦争』
姿無きエリスロス
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メメタァ 「めんどくさいからこっちは装飾とかイチイチやらんぞ」 |
自分が人間だった頃の記憶を思い出したいのはやまやまだが、いくらなんでもイバラシティの私がどうこう出来る訳もない。
そして私は侵略戦争に一切興味がない。雰囲気に流される程度が関の山だ。
「……ふむ、どうにかしてハザマからイバラシティに何か送り込めないかやってみるか」
タダの実験である。
戦闘外でロールしてる分にはいくらでも自由が利く(何でもして良いとは言ってない)のがこの世界の良い所である。
「はいそれでは今回の実験、使い魔をあっちに送り込めるか試してみましょう」
基本的には自力でほぼ全て片付くせいでさっぱり出番の無い使役魔法を幾つか思い浮かべる。
《リアクト》はどうにか向こうに行けた事を踏まえ、遠隔操作型はナシ。
プログラム型は上手くいっても面白味が無い。
となれば自律型、勝手に動いてくれるモノにするほかない。
「────術者を私に固定。《次元渡り/プレインズウォーク》起動。起動タイマーをハザマ時刻開始から2時間後……あと数分後にセット。《存在固着ブースタ》付与。《認識阻害ブースタ》付与。《魔導マスタリ☆》付与。──《》付与──《》付与──付与……」
「……そうだな、後はお前に名前を付けるとするなら…」
「私が《赤い》狐だし、お前は《緑の》狸という事にしようそうしよう」
この一連の作業を行っている間、エリスロスは常に真顔かつ棒読みであった……