
「スッゾコラー!」
「スッゾコラー!」
「スッゾコラー!」
「スッゾコラー!」
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おもい 「あっち行きなさいよ! そしてどんだけいるのよ、このヤンキー!!」 |
夢であって欲しいとあれだけ願った侵略は本当だった。
荒廃したイバラシティに似た世界、ハザマの世界。
無事ナレハテを独力で倒した思であったが、彼女は今、複数のリーゼントとモヒカンから構成される若者集団から追われている。
なぜ、こんなにもヤンキーが?
その答えは、ここがイバラシティに似た世界だからだろうと推察される。
イバラシティは、日本屈指のヤンキー生産地。歩けばヤンキーに絡まれ、見渡せばヤンキーがたむろし、家にいてもバイクが走る音が聞こえてくる。
その影響がハザマの世界にも及んでいたのだ。
さらに思の不運は重なる。
道にはガムが吐き捨てられ、それを踏むたびに転び。
路上の石壁は、自ら歩行し思を迷わせた。
もちろん思も最初は抵抗を試みた。
しかし、今の思では一撃で伝統歴戦のヤンキーを倒すことができず、一撃入れた間に3人のヤンキーが増える調子でキリがない。
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おもい 「だからと言ってヤンキーいすぎよ! 何!? 世紀末なの!??」 |
そして、地べたを転がり、草むらに飛び込み、捨てられた段ボールを被ってなんとかヤンキーたちから逃げることができた思。
思は思う。
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おもい 「これ、1人じゃダメね……。どうにしかして仲間を探さないと……。」 |
そんなことはない。
1人なら相手の数も減るはずだった。ただたんに不幸なだけである。
どうしたものかと思案する思。
その打開策は、今しがた身を隠すために被った段ボールにあった。
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おもい 「『誰か拾ってください』……。捨て猫か何かが入っていた箱だったのね。」 |
段ボールに黒マジックで刻まれたSOSサイン。
とりあえず、文字の書いてある部分を手でちぎって眺める思。
もちろん思だってこんなもの掲げてパーティ募集なんてしたくない。
しかし現状が手詰まりになっているのも事実だった。
プライドを取るか、仲間を取るか。
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おもい 「ぐ……。しょ、しょうがないわね。まさかこんな僻地で捨て猫になるとは思わなかったわ。」 |
プライドは捨てられた。
憎きヤンキー共を倒せるならば。
思は涙を呑んで、苦渋の選択を受け入れたのだ。
そして、捨てる神あれば拾う神あり。
傍目人相の悪い男がこちらに近づいてくるではないか。
長い黒髪を一つに束ね、殺気を纏ったギラついた瞳、そして黒で統一された服装。
あまり関わりたくない風貌に、思は嫌な予感でいっぱいになった。
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おもい 「だ、誰なのよ!? ヤンキーね! ヤンキーのボスみたいな見た目しているもの!! すぐ手が出る脳みそ筋肉のクセにインテリっぽい見た目して周りと一線画しているヤンキーに違いないわ!!」 |
「俺は味方だ。今は大人しくしてろ」
男は乱暴な命令語を巧みに使い、思を突然掴み、ひょいと持ちあげる。
そしてどこかへ歩き出すではないか。
まさか10歳の少女を力づくでどこかへ連れて行くと言うのだろうか……。
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おもい 「イヤ! 離して!!! このロリコン!! 誰か、助けて!!!」 |
思は叫ぶ。
それは自分の現在地と周囲8エリアに届くメッセージです。
それは自分の現在地と周囲8エリアに届くメッセージです。
しかしその声に応えてくれるものはなく、思は抵抗の甲斐無くして、どこかへ連れて行かれるのだった。
――――――
連れて行かれた先には、2人の人物が待っていた。
両方とも学校で1度2度なら見たことある人物たちであったが、どこか学校との雰囲気が違う。
怪しい男性が1人に呼び掛ける。
「待たせたな魔王。コイツ拾ってきた」
その様子を見ていると、どうやら魔王と呼ばれた橙色の髪をした女性に、思を仲間にしようと説得しているらしい。
魔王様もその意見に対して不満はないようである。
それに対し泣き叫んで疲れてしまった思は、もう全てがどうでもよくなり、全ての返答をはいとYESだけで済まし、めでたく念願の仲間を手に入れるに至たった。
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おもい 「でも、魔王ってなんだろう。」 |
とりあえず今は現実逃避をして、思考停止する思であった。
ちゃんと魔王たちの話は聞いたのか思? 普通に考えれば侵略といえば魔王だぞ。
そしてこれから、ヤンキーとガムと壁へのリベンジの時だ。どうする思。