とぷん
とぷん
とぷん
とぷん
――とぷん――
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ヴォルフ 「――――――――」 |
―――薄れた思考に、、大量の記憶が入ってくる。
底の付いた瓶のソコに液体がたまっていく音。
ソレは夏の暑い日に注いだ麦茶
それは寒い冬の日に誰かが入れてくれたホットミルク
ソれは春のあたたかな日のピクニックで飲んだコーヒ-
そレは秋の夜長に夢想するためにいれたココア
コップは自分、液体は仮初の体に蓄積された記憶。
器は自分、液体は科白目の体にためたかすれた記憶
―――
ソレは他者の選択肢を見るために、感情のある自分を望んだ世界の記憶
周りと見渡せば見慣れた世界
これから侵略戦争を開始する場所
そもそも自分の生きていた否定の世界。
これから始まるは選択と終末の物語。
見たいものがある。
空っぽで、すべて壊れてしまった自分。
―魔狼『フェンリル』―
それが自分の本来の種族。傍らにいる塊。そうあの夢の世界では「妹」をなのる少女も同じくそう
否定された世界の種族。
否定の理は
―虚無―
幻想存在は科学に否定され、幻のモノとなり泡沫えと消えていく。
全ての消えていったもの。消えたと思いたくないもの。
人は、すべてを否定した。
失っていない、捨ててはいない
全ては、誰かに盗まれたのだ。すべては誰かが捨てたのだ。
そういった
他者への責任転嫁が形をなしたものが。そう…魔狼。
だからこそ。
魔狼として目が覚めた時。
自分には”感情”も”興味”もすべてを持ち合わせていなかった。
そう。夢の世界の自分もほとんど壊れている。
けれど、今の現実の自分はすべて壊れているのだ。
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ヴォルフ 「機能で来ているならソレでいいか。」 |
壊れているからと言って、別段どうという事でもない。
直ぐにその思考を捨てる。
虚無とは否定であり、思考の停止。停滞。それから生まれた自分もまた思考は死んでいる。
さぁ、見たいものをみよう。
何度目かになる思考の切り替え。
この壊れて何も感じない自分でも。一つだけ
見たいと強く強く求めるものがある
人の選択とその終末だ。
自分は捨てたもの。それを否定したものから生まれたもの。
捨てて捨ててなお拾いたいものとは。
自分が生まれる以上にそれにしがみつくものとは
最初は、壊れた自分に生まれた初めての興味だ。
きっとコレを捨てれば何もない。勿論ソレでもいいけれど
いや。違う
見なければならない
だからこそ。この戦争に参加したのだ。
さぁ。そろそろゲームが始まる時間だ。
まだこの世界で夢の世界のアバターが使えるのならば。
少し。夢の世界の住人へと揺さぶりをかけてみようか。
模倣であればできる。食べたから。
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ルプス 「お姉様?」 |
起き上がった、傍らの塊が声をかけてくる。
無邪気に無垢に、狂気にそまった瞳は自分のからっぽの瞳と違って
様々なものが詰まっている気がする。
けれど、ソレを持とうが持つまいが…そう―――――
どうでもいい
呼びかけた言葉に答えずにふらり、と歩き出す。
後ろの塊はにっこり笑うとついてくる様に走りだした。
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ヴォルフ 「さぁ…。」 |
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ヴォルフ 「……―――私が生きるか。俺が死ぬか。選択はすでに始まっている。 精々頑張って選び取るといい。」 |
救えるものならば。
殺せるものならば。
『選べるもの』ならば、選び取るといい。
愛らしくも優しい夢の世界の人間よ
醜くも生きている否定の世界の住人よ
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ヴォルフ 「さぁ!私にお前たちの最後を見せてくれ」 |