「……どうですか。先は見えましたか。」
「……先は存在する。異なる世界線にて、続く道がある。」
「そうですか。それでは、予定通りに進めればいいですね?」
「あぁ。滅び逝く世界を無へと帰す為に、障害となる要素を排除せよ」
「御意。……では、お願いしますね。虚なるモノ。」
「わかっている。貴様も仕損ずるなよ、狭間の死神。」
燃え盛る瓦礫の荒野。
崩れ落ちた建物。
――倒れ伏す、巨大なもの。
「フウ!ツチ!!兄ちゃん!!!
何で、どうして!!!」
叫ぶ。狩り続ける一つの人影に向けて。例え聞こえていなくとも。
「どうして消えなきゃならないの!?
悪いのは人間だ!俺達は望まれたからそうなった!」
容赦無く振るわれる鎌。また一つ、巨大なものが狩られる。
「望んだ形になった、それなのに!どうして!!」
気づけば周りは同僚『だった』ものばかり。
「やめて、もう、やめて……。」
鎌を払い、此方に向かってくる人影。
「嫌だよ……消えたくない……。」
消え入るような声。目の前に、それはやってきて。
『最早、望んだ人間は居ない。我々を信じる者も居ない。
信仰無き今、この世界は終わりを迎えるのみ。』
人影――黒い髪の少女は冷たい声で淡々とそう告げる。
『ですが――ボクらは認められない。
このまま終わりを迎えてしまえば、先が無くなってしまう。
まだ続く未来が存在している。それをここで断ち切るわけにはいかないんです。』
少女が大鎌を構える。
『――認めたら、この結末で物語は終わってしまう。
だから、こんな結末は認めちゃいけないんですよ』
紅と蒼の瞳を細め、苦し気に呟いて。
大鎌を振り下ろした。
「……これでよかったんでしょうか。」
「あぁ、それでいい。間も無く剪定は完了する」
「そうですか。……後は別のボクらに託しましょう。」
「そうだな。……さて、これで終わりだ。」
「えぇ。それではまた別の世界線で。ウツロさん」
「貴様もな、ヒョウリ」
……いいわけないじゃないか。
それで剪定され存在ごと『否定』された俺は何なんだ?
例え消えゆく定めにあったとしても、俺が居たという証拠すら『否定』されて。
『まだ続く未来』とやらの為に俺は居なかった事とされた。
未来の俺は幸せにしてると言うのか?
なら、俺は何の為に生まれたんだ?
人間に良い様に使われて、化け物として扱われて。
そんな俺に存在価値は無いと?
殺したくて堪らない。俺を堕とした人間全てを。
憎い。俺を殺した死神が。
妬ましい。俺の代わりに生きる別の俺が。
嗚呼、憎い、妬ましい、憎い、憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い――
嗚呼、ああ。
俺は――
――全てが、妬ましい