
逢魔が時、突然脳内に流れ込んできた情報。侵略、アンジニティ、ワールドスワップ・・・。
話の内容はよくわからなかったが、イバラシティの平穏が脅かされているのはよく解った。
この、堂島湧泉の街、イバラシティが・・・っ!
許せん、と思った。
侵略者どもには思い知らせねばならぬ、そう思った。
だが同時に、とても魅力的な事象も含んでいる事も理解した。
『アンジニティ』。
掃き溜めの世界ということらしいが、正しくその機能を果たしていないのではないか?もし本当に掃き溜めの世界だというならば、
『まだこちらには捨てたいのに捨てていないものが多すぎる。』
街が出す廃棄物、排水、排煙、果ては居てはならない人物等々・・・もっと効果的にアンジニティを『利用』すれば、このイバラシティはもっと良くなる。もっと栄える。 欲しい。
欲しい。アンジニティが欲しい。世界規模の大きなゴミ箱、これは果てしない利潤をイバラシティにもたらすだろう。
そこまで考えて、赤く昏い空を見上げる。
―――そのためには、1プレイヤーではいかんな。胴元にならねばならん。その、ワールドスワップ?それが必要だ。動かねばならん、ならんのだが。
周囲を見渡す。誰も居ない。秘書も、SPも、部下も誰も。指図すべき相手は誰もおらず、自分ひとり。ゴツく毛深い自分の拳を、ぐっろ握って眺める。
「おお、おお、なんということじゃい!この、帝王が、この堂島が!まさか裸一貫、拳で国盗りを1から始めねばならぬとは!!がははははははは!!」
笑う、笑う、心から。こんな楽しいことはない!着物をはだけて鍛えた肉体を外気に晒す。むわっと、こもった熱がハザマの空気に逃げていく。
目線の先には赤い不定形の『ナレハテ』。
右腕をぐるぐる回してから、どしっ!と腰を落とす。
「せっかくじゃ、軽く、UD理論の講義でも始めるとしようかの。」
イバラシティの大物は、ハザマで解き放たれた一頭のオスと なった。