侵略相手との戦闘。
この状況を作り出した者からすればこれが目的なのだから避けることはできないのだろう。
逃げ続けたとしても、遅かれ早かれ出会ってしまっていたと思う。
そのために準備はしてきたつもりだが、やはりまだどこかで甘さがあったのだ。
私たちは敗退した。
全員無事で何事もなければ次は頑張ろうとかまた楽観してしまっていたかもしれない。
だがそれは許されないことだと心に刻み込まれた。
現状だけで語るなら、全員無事とも言える。
視線は向けず、横を歩く雫ちゃんの光を視る。
背後を歩くハティちゃんとれーこちゃんの光も視る。ハティちゃんの傍にはリアさんの光もある。
みんな今は問題無く、確かな光を湛えている。
だけどその光が一つ、戦いの直後に一度途絶えたのを忘れることはできない。忘れてはいけない。
光が途絶えたのは雫ちゃん。
無茶をしないと話していたのはそのちょっと前だった気がするが、
その時に感じていたことを思えばやっぱりとも言える。
大切に守らなければいけない存在。
そう思っていたはずなのに、別世界の元軍人という経歴にまだどこかで甘えていた。
無茶をする子ほど目が離せないだろうと猛省している。
侵略者の猛攻に戦線が崩壊した瞬間。
まずハティちゃんは倒れた。その際にはもうみんな限界だった。
れーこちゃんは後退し、私もハティちゃんに手を伸ばして離脱しようとした。
その時、雫ちゃんだけはまだ相手に向かって構えていたのだ。
状況的にどうしようもないことは雫ちゃんもわかっていただろう。
私は離脱の旨を伝え、ハティちゃんを連れて身を隠した。
雫ちゃんもすぐに後から逃げてきてくれると信じていた。
戦いの物音はその後すぐに止みはした。
だが雫ちゃんが逃げた様子は感じられなかったのだ。
警戒は解かなかったがすぐに戦いの場に戻った。
光は、無くなっていた。
相手の姿は無く、ただ一人、そこに倒れた雫ちゃんの姿だけがあった。
あの絶望を、私は忘れない。
忘れられない。
眠っていても、気を失っていても、光は消えたりしない。
私は雫ちゃんが死んでしまったと思った。そう実感した。
絶望の時間の後、雫ちゃんに光が戻った。
私は気が動転していたし、前後の状態をはっきりとは覚えきれていない。
ただただ嬉しく、安心して、涙が止まらなかった。
人が死ぬ場面をじっくり観察したことは無いので光が消えた後でも蘇生は可能なのかもしれない。
少し休むと傷が完治するこの場所なら死ぬ怪我だって元に戻るのかもしれない。
原因ははっきりしない。
でも理由なんてもういい、そんな場面にはもう出会いたくない。
死んでしまう状況であったのは間違いない。
そんな危険はもう冒させない。
戦いに負ける時はこれからもあるだろう。
でも離脱する時はみんな一緒に、全員で生き残らなければいけない。
雫ちゃんはきっとまた無茶をするだろう。
この子は、そういう子だ。
この、私の直観こそを信じよう。
先に逃げてはくれないだろうから、一緒に逃げる。
それでも無茶をするなら無理にでも手を引いて逃げるしかない。
そのためには、私ももう少し無茶はしよう。
絶対、繰り返させたりはしない。
甘い考えは捨てよう。
全員無事に元の街に戻る。
その誓いを果たす。
絶対に。