このハザマと呼ばれていた場所。
なんとも不思議なところだとしか言えない。
訪れてから無理やり戦うことになって、そして戦う準備をすることになって、気付いた。
異能の力が増していること。
侵略行為に対抗するため、同じイバラ街の人やその協力者と力を合わせる。
その一環として練習試合をさせてもらっている。
雫ちゃんから銃を借りて、初めて扱うその武器と分類されるものに慣れるためもあるけど、
使い慣れた異能の力を、慣れない出力で扱う練習でもあった。
この力に振り回されることもあったけど、向き合って、認識して、これまで生きてきたし、これからも生きていく。
そのためにはその力をしっかりと知っておく必要がある。
<奪魂>
そう名付けた異能。
相手から魂を奪う異能。と、子供の頃に思って名付けた異能。
一般的にイメージする魂を奪うものではないと気付いたけど、面倒に思ってわざわざ改名はしなかった。
一般的なイメージだって、誰かが実際に確かめたものではない。
なのでわざわざ変える必要もないと思ったから。
この力は生き物や、時には物にも宿る生命エネルギーを視て、それを吸収して自分のものにする力。
吸収するという行為を応用し、逆転させて相手に自分のエネルギーを与えることもできるようになった。
そして、このハザマにおいては更に能力の幅が広がった。
まず、単純にエネルギーの吸収力が上がった。
ちょっと吸収しようとしても、思っていた以上のエネルギーを吸収してしまった。
エネルギーの吸収スピードも上がったと思う。
日常で使うのに加減ができないと非常に困る。
一番に練習しなければいけないこと。
そして、吸収したエネルギーの変換効率も上がっている気がする。
どうしたって奪ったエネルギーをそのまま吸収することはできないが、その効率は上がっている。
またエネルギーを局所に集めることもできたが、その操作も容易くなった。
それと視る力についても上がっている。
このハザマにおいて、生き物以外にも宿るエネルギーを視る機会は爆発的に増えた。
もちろん生き物以外のエネルギーはとても小さいので、
景色が眩しすぎるということにならなかったことには助かりはした。
街にいた頃は、それこそ生き物以外のエネルギーなんて稀にしか視なかったものだ。
だがここでは、それこそそこらじゅうに視えた。
石や草、ちょっとした落し物、いろいろな物にエネルギーが視える。
そういう場所ということもあるのだろう。
ただ私の異能の力が増えたことで視えるようになったのも間違いはない。
あとは試しにと思って、品物のエネルギーを移動させてみることにも成功した。
戦う上でも、力を持つエネルギーを合わせた品物はとても役に立つ。
今後も試していこうと思う。
いきなり急成長した能力の扱いに奮闘しながらも、この場所の探索を続けていた。
できるだけ安全に配慮しながら。
ただ、少し前からちょっと問題も発生していた。
後方にエネルギーが視えていた。
なるべく避けようと思っていたが、振りきれそうもなかった。
偶然か、それとも狙って付け狙われているのだろうか。
たまたま道中が一緒になった友好的なイバラ街の人間なら良い。
でも、そうじゃない場合は。
今この場所にいるのは無理やりだが、侵略行為に抗うためだということを意識する。
やはり、そういうことなのだろうか。
覚悟は、決めるしかない。