生きるための戦闘行為、私はそれを自分がすることになるとは思っていなかった。
何があるかわからない騒がしい日常。
その騒がしさの中には危険もあり、用心は必要だった。思わぬ事故に合わないように。
そう思っていた。
注意すべきは事故であって、こんな殺伐とした光景ではなかった。
私は銃を手に、見知らぬ生物と相対していた。
日常では手にすることはない武器だった。
もちろん私も持っていなかった。
戦いが必要だと思い、借りた。生きぬくための力が足りなかったから。
異能の溢れる街にいれば、ちょっと手を伸ばした先に非日常はあった。
でも、複雑な気持ちになる。
その伸ばした手の先は、まだ小さな女の子だったのだから。
雫ちゃん。よく利用させてもらっていた肉屋のお子さんだった。
だった。と、過去形に表現が正しい。
異能とは違う、今回の現象に関する影響でそこにいたらしい。
彼女は、軍人だったそうだ。
使いやすい武器をお願いし、この銃を借りた。
戦いにおいて彼女はとても頼もしい。
身体能力は高いし、知識も経験もある。
まだ、中学生くらいなはずなのに。
つまり、それは理不尽な現実の結果だったのだ。
こんな小さな子が軍人になんて。
私は許せない。
彼女に頼ることは仕方がない。
必要なことだ。
でも、それでも、私は彼女のことも守りたいと願う。
行動を共にしている仲間は彼女の他にもいる。
街の外から訪れていたハティちゃん。歳は雫ちゃんと同じくらいだろう。
それと彼女と一緒にいたリアさん。
リアさんは人間ではなかった。
魂の光は見えたが、それは人間とは違っていたので一目でわかった。
生物というよりは、魔術的な機械らしい。
魔術はあの街でもあまり馴染はない。
異能は魔法ではない。
それでもまぁ、あの街にいれば魔術があったとしても驚きはしなかった。
異能と偽って魔術を使っていた人もいるかもしれない。
ハティちゃんは魔術を使う。
彼女もこの状況に困惑していたが、一緒に頑張ってくれている。
彼女には危険な目にはあって欲しくはない。
それでもやはり、現実はいつも理不尽で。
この異常を無事に抜け出し、街の外へ送り出せるように。
私は彼女のことも守ってみせる。
そしてもう一人の仲間。
れーこちゃん。歳は小学生くらいだろう。
たしか以前雫ちゃんのお店で買い物をする際に見かけた気もする。
一番の心配として、彼女は戦うための力も異能も特にないことだった。
彼女の異能は戦闘行為を行えるものではなかった。
私もそうだけど、ここに呼ばれて普段より戦えるようになった気がする。
それなりに戦って身を守ることはできるかもしれないが、それは本当にそれなりにだ。
危険が迫った時に対応しきれるか、明るい答えは出てこない。
安全な場所に避難することも勧めはしたが、
私にもどこが安全な場所なんてわからなかった。
彼女は誰かといることを望んでいたようだし、私は目の届くところで彼女を守ることを決めた。
それが私の選択だ。
今はこの4人、リアさんを数えていいなら5人で行動している。
わざわざ問うまでなく、不安が無いと言えば嘘になる。
こんな子供ばかり、女の子ばかりの組み合わせだ。
ただもう、下手に男の人を入れるのはそれはそれで危険に思える。
今のまま、できることをやっていくしかない。
これまでだって、これからだって、やることをやっていくしかないのだ。
そう、それだけだ。