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目が覚めた時、僕は荒廃した世界の中にいた
どこか見たことのあるようで、どこにも見覚えがないその場所が
自分の住んでいたイバラシティ…のような場所であることに気づくのに、そう時間はかからなかった
目覚めてすぐに出会ったのは、榊と名乗っていたオールバックの男性
そして、その顔を見てすぐに思い出した
アンジニティと名乗る勢力が、イバラシティを侵略しにきているということに
僕は、榊と名乗った男性から説明を受けた後すぐに駆け出した
僕は一人では戦えない…正確には、戦う度胸が、ない
ナレハテとかいう変な…生き物かどうかわからないやつにだって、たった一人では立ち向かえなくて
……でも、その時脳裏に、ある女の子の姿が過った
彼女も、この世界に来てしまっているのだろうか…
だとするなら、彼女もまた、心細さと恐怖に震えているのだろうか
……そう思った瞬間、両腕に力が籠もった
もし、もしこっちに来ていたのなら…彼女は身動きが取れてないかもしれない
そう思ったら居ても立ってもいられなくて、僕は走り出した
そうやって暫くして、僕はやっと見つけることができた
あの服はソラコー…相良伊橋高校の制服だ、間違いない!
しかも見覚えのある後ろ姿だ、あれは…そうだ、同じクラスの●●さんだ
疲れで棒のようになっていた足に、また力が入る
一人じゃないなら戦える!侵略にもみんなとなら立ち向かえる!
そう思って、うつむきがちになっていた顔を上げた時
あたりがふっと暗くなって
そしたら
何かに
掴ま
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_____……なかなかの味ね
ハザマでの最初の食事は、相良伊橋高校の生徒だった。名前はさっぱりわからないが
寮住まいでなかった生徒の顔まで逐一全部覚えておくほど、あちらの自分/
錫也は勤勉ではないようだ
もっとも、そんなものは味のほうに関して差し障るものでもない
自分ではなく、誰かの想い人であることのほうが自分の食事にとっては大事な要素だ
しかし今回のはまぁ浅すぎず深すぎずといった関係だったのだろうか、居なくなればそこそこに悲しまれるが、深い付き合いをしているような人間もいなかった者の味だ
それでも……ん?いや…これは…?
すでに頭と右腕は千切って食べた後だったが、確認のために左腕も千切って口に放り込んだ
なるほどなるほど、これは非常に興味深い味だ
どうやらこの少年には、好きな女子がいたようではないか!
淡い淡い恋心だ、きっとおくびにも出さずに日々を過ごしていたに違いない、まったくなんていじらしい!
これはこれで素敵な味わいだ、こういった感情もまた、自分の食べたことのない味へとなっていく!
最高だ、イバラシティ!こんな子で、こんなに美味しいのなら…あぁ、他の子はどれだけ美味しいのかしら!
想像だけで涎が止まらなくなってしまう、いやはやまったくはしたない……
さて、こういったものは自分一人で楽しんでしまってもいいのだが……幸いにも協力者がいる
侵略成功のためには、彼らにもがんばってもらわねばならない
こういう
"食料"も共有していくべきだろう
一つは、人の欲に塗れ、利用され、裏切られ、その果てへと誘われた哀れな"
結晶海獣シルキライト"へ
そしてもうひとつは……愚かで、醜くて、けれどもどうしようもなく……
………なんだろう、この感情は
あちらの私の思考の一部が入ってきているのだろうか、癪に障るノイズだ…
まぁ、いい…なんにせよ、この両名には働いてもらわねばならないのだ
手に入れた
生徒肉塊を捏ね回して、液体を絞り出したり、肉片に成形したりして、それを分け与える
………さぁ、お食べなさい……お腹が空いているでしょう……?