ハザマ空間。辺りをぐるりと見渡して、溜息を吐く
こんなことが、したかったんじゃ、ないけれど。
………
私の話をしよう。名前はヤシロユーリ。16歳で、勿論性別は見ての通り、女子。
好きな食べ物は、バターの良い香りがするホットケーキ。ふかふかに焼いているのが好き
それにいちごのジャムをふわりと乗せても甘酸っぱくて美味しいし、蜂蜜をとろりとかけても良い。
一番好きなのはお母さんの作ってくれるホットケーキ。フライパンをひっくり返すのがとっても上手で、それをじっと見ているのも大好きだ。
嫌いな食べ物は、……いくつもあるけど、しいたけ。なんとなく変な風味がするのが、どうしても苦手。
この世の食べ物じゃ無いと思うし、人が食べるものじゃないと断言できる。しいたけが好きな人には申し訳ないけれど、私はどうしてもダメだった
異能は、『誰かの異能を強化する』ちから。
どのくらいとか、そういうのは自分じゃ制御出来なくて。でもすごく強く出来た事はないから、そんなに危険でもないと……思う
そうだ。最近まで海外で暮らしていて。
海の向こうに居る両親は、とても暖かくて、いつだって私を惜しみなく愛してくれる
今回だって出掛け側、二人は優しいキスを送ってくれた。愛してると抱き締めてくれた。
それで最近、色々あって、私ひとりでこのイバラシティに帰ってきた。もともと小さい頃はこの辺りに住んでいて、確か遠い親戚も居たと思う。
だからこっちで、お世話になろうと思ったんだけど、辿り着いた先は一面に広がる焼け野原。
キャリーバッグを引く手が痛かったのは、まだ覚えてる。あの日は何より、寒かった
幼馴染と再開して、高校にも通っていて。家だって見つかって、とても優しい大家さんと……その甥に、良くしてもらっていて……それで、
それで……このイバラシティを、守りたいって、守ろうって。守らなきゃって、思って。
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夢璃 「…………。」 |
ため息ひとつ。記憶を、整理する。
ここに来ると、ほんとうの記憶を、思い出す。思い出してしまう
私はイバラシティで産まれてなんかいないんだって、嫌でも理解する。
楽しい高校、可愛い幼馴染、暖かい家、──家族。 そのどれもを、私は持っていない。
アンジニティで産まれ落ちた存在、ただそれだけが事実
それでも、侵略なんてしたくないなぁと、思う。
アンジニティだとか、イバラシティだとか。それは大事な事なんだろうけど、暖かく迎え入れてくれた人達がいる事も事実だ
ならば、防衛に回れば良い。 そう、思っていた。
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夢璃 「…………貴方は。そちら側なのね」 |
くるりと振り返り、どういう原理なのかは分からないが、ストローを蒸しシャボン玉を量産する彼を瞳に映す
(え?ほんとにどうなっているのアレ。煙草だって言い張ってるけど)
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夢璃 「貴方は、私の──────、」 |
大切な。私にとっては、せかいで、たったふたりだけの、──────だから、
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夢璃 「貴方の力になる。」 |
ただそれだけを、桃色の瞳に誓って決意した