ハザマの時が訪れ、イバラで過ごした時が流れ込む。もともと長命な存在である彼女にとっては短い期間だったであろうが、今までとは違う”日常”が流れる時だったのであろう
仮初めではあろうが学校という概念に触れ、故郷の世界にあった学校というのもああいう場所だったのだろうか、などと考えながら地面を杖でコツン、と音が出るように叩き周囲の状況を確認する。
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ひめしゃら 「居るのかしら?ムニ」 |
そう呼びかけると、周囲にあった黒い丸い物体が体を起こした
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ムニ 「居るッスけどー、ここどこッスかね?アンジニティでも楽園でもなさそうッスけど」 |
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ひめしゃら 「おそらく…ハザマと呼ばれる場所ね。どうにもアンジニティの戦争に巻き込まれたみたいよ」 |
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ムニ 「イバラシティとか言う場所に関係があるやつッスか。ひどいッスよねーオレたち居ないみたいな状態になってるじゃないッスかあそこ!」 |
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ひめしゃら 「ちゃんと祀られてるじゃない、シラデク様として」 |
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ムニ 「シャランディークの怪物でシラデクッスか。それにしてもひめさま、格好そのままでいいんスか。」 |
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ひめしゃら 「確かにここでは表情を隠す必要もないものね、あっちの私じゃあるまいし」 |
ひめしゃらが自分の顔のヴェールを取り払うと、おそらくもともとの姿であろう…どこか人間らしくない眼と赤い羽根の耳のような何かが現れる。イバラシティでは確認出来なかった特徴だろう
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ひめしゃら 「あちらでは神の眼も動かないのは……私としては使命を果たせなくてとてもイヤね。シャランディークも観察出来ないし、"高みを目指すもの"の情報も集められないわ」 |
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ムニ 「高み?あ、カミに近づく人々の情報をカミサマに伝える仕事のことッスね!」 |
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ひめしゃら 「そ、イバラの人々に怨みはないし、個人的には侵略する欠点が多いのよねこの戦争。だからもともと居たアンジニティではなくイバラシティにつくことにするから、サポートよろしくね」 |
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??? 「――――」 |
巨大な歪な片腕のゴーレムのような存在が、空気を振動させる音なき声をあげながら大きな棺桶のようなものを運びながら近づいてきた
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ひめしゃら 「ランカイも居たのね、棺を運んできてくれてありがとう。あちらで拙い言葉で看板を読んでくれてたのもあなたなのかしら? 高音域過ぎて聴くのは大変だったのだけれど、それでも助かったわ」 |
ランカイと呼ばれた巨大な存在は肯定をするようにゆっくりとうなずき、ひめしゃらの近くに運んできた棺桶をゆっくりと下ろした。
その棺桶にはうすく赤い十字架のような模様が描かれているが、その模様は力が足りないかのようにゆっくりと点滅を繰り返している
ひめしゃらはその棺桶に手を当てて少し様子をみていたがすぐ大体の状態がわかったのか魔術で鎖を作り棺に引っ掛けて出発の準備をする
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ムニ 「ひめさま、その棺活動してないみたいッスけど、大丈夫なんスか?」 |
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ひめしゃら 「この状態なら投げれば起きるでしょ?さ、ゆっくりしてる暇はないわ」 |
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ムニ 「乱暴な修理ッスね…」 |