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ランニア 「え……?」 |
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リゼッテ 「あ、あれ?」 |
気が付いたらそこにいた。それ以外に何と言いようも無かった。
ついさっきまで、同居人のリゼちゃんと一緒にお菓子をつまみながら他愛のないおしゃべりをしていて、
再来週に迫ったテストの話だとか今晩は何を食べようだとか盛り上がっていたはずだった。
突然見たことも無い土地にぽつんと放り出された私達は、きょろきょろと辺りを見回す。
タイトルは思い出せないけれど、地球外生命体が侵略してくる映画で見たような景色が広がっているし、
空だって災いの前触れがあるとしたらきっとこんな色なのだろう。
私たちはどこに連れてこられたのだろうか?
その疑問は目の前の男性の言葉ですぐ解消された。
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リゼッテ 「ハザマ……?」 |
今流行りの異世界召喚をされたのだろうか?それにしたってこの世界は荒れ果てている。
そう言えば侵略者から世界を守れ的な説明を受けた記憶があるけれど、
この荒廃した地に守る程の価値があるものなのだろうか……。
男性の話を他所にそんな事を考える。
今思えば自分でも引いてしまうくらい落ち着いてに事態を受け止めていた。この時までは。
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リゼッテ 「らんにゃん、後ろ!」 |
男性の言葉にリゼちゃんが珍しく大きな声を出し、私の腕を強く引っ張った。
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ランニア 「ど、どうしたんですか……」 |
リゼちゃんの視線の先を追うと……、スライムとでも呼べば良いのだろうか。
どろどろとした軟体の生き物がすぐそこまで近づいていた。
アレを倒す?どうやって?
私もリゼちゃんも攻撃力に長けた異能は持っていないし、腕力に自身がある訳でもない。
要するに私たちは今完全に丸腰だ。
チュートリアルに採用されるのは油断をしても負けることのない相手が定石だけど、それはゲームでの話。
今はそうではないのだ。
いつだったかエンジョイ田本で出会ったエリカちゃんが話していたようにツーバイフォーでも買っておけば良かった。
地面に視線を這わせるが残念ながら振り回せそうなものはその辺には無かった。
どうしようとじりじりと後ずさりしてる中……リゼちゃんが1歩踏み出す。
その手にはどこから取り出したのか、やたら出来の良い動物の耳がついたカチューシャが握られていて、
スライムに向かって歩みを進めながら、それを頭に装着した。
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ランニア 「リゼちゃん?ふざけてる場合じゃないですって!」 |
取り乱してしまったんだろうかと思わず声を荒げる私に振り向くと、
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リゼッテ 「大丈夫、私に任せて。絶対ランにゃんを連れて一緒にお家に帰るから」 |
少し哀しそうな顔でにこりと笑い、そう答えた。