ヨーチンの一週間

「そう、何時だったか戦場に英雄達による幾多の声が駆け巡った時があったでしょう？ あの時に天恵が振り分けられてたみたい。

調べてみるの、ヨーチン先生？ カモノハシは見た目以上に危険…気をつけてくださいね。」

「先生は純粋に結果を受け入れられるのね。
言うは易し行うは難しの類ではあるけれど、先生なら出来るのでしょう。

そう簡単に割り切ることが出来ない人は、きっと恐慌を来すでしょう…わたしとかはその典型。」

「長い長い時を越えて渡ってくる光を解明しようと、そして、星々を内包する宇宙に無限の可能性があるのだと信じたい…それは否定しないわ、ヨーチン先生。

(ヨーチンに言われ、空を仰ぎ見る)
それでも星が見える限り、わたしは絶望しない…常闇の世界にも星があるのだもの(力強くはなかったが、どうにか笑みを浮かべ)」

「ブラックホールには特異点なる存在があるという…名前と呼ぶには余りにも薄弱な彼女という存在が、それに近しい存在だとしたら厄介なことになりそうですね。」

「制御方法…それなら先生自身が特異点になる…とか？ エネルギーを収縮する術を見つけるなり作るなり必要になってくるでしょうけど。」

「やだ…なんで泣いてるんだろ、わたし。先生が話してくれた事に嫌悪感を抱いたわけじゃない…受け止められると思ってたのに(頬を伝う涙を時折拭りながら、言葉に従うように僅かに上を向いて相手を見やる)」

「鼠とカモノハシって肉質とか似ているのかしら…？

でも、残念ね、先生。わたしの占いですと、カモノハシ化した英雄達はもうじき元通りになるみたいですよ…野生のカモノハシでも捕まえますか？(言葉尻こそ強かったが、そのやり取りに救われたと思うところがあったのだろう。故に、口にはしなかったが、胸中で礼の言葉を言っていた)」

「この細工のお陰か、随分と習熟が早くなりました。
この調子ならそれなりに出遅れた分を取り戻せそうです。

そうだ。マーケットに少々型遅れ気味の銃器があったので、是非其方にも細工をして頂ければと。
本当は防具類が良いんですが、あちらは競争率が高くなっていて……
詳細は取引メイさんを通じないと怒られてしまいますので、其方から」

「……(暫し固まった後)そっちを訊いても良かったんですね

染みの位置にも結構拘りがあるんですねぇ……(少し笑みが引きつっているような気がしなくもない)
確かに長年使っていればそういうものはありますが、白く無い白衣というのは白衣と言っても……あ、いえ、何でもありません。
そうですよね、性能が保障されていれば見てくれくらい……問題ないんですよね？

ところで、その染みはいったい何の染みなんでしょうか……？」