その気になれば、一瞬で身体ごと喰いちぎり、捕食することもできるのでしょうが、
抵抗できないことを知ってか、そのような効率の悪い食べ方はせずに。
闇へと沈めるようにして、じわじわと魔力を吸収していく様は、真綿で首を絞めるようです。
深く沈むごとに、身体の組成までも魔力へと変換されて溶けてゆくような感覚に、意識は遠退いてゆくでしょう。

そして、朝陽が顔を出す頃には、身体はほぼ全てが魔力へと分解されて、
後に残された灰屑のようなものが風に流されてゆきます。

日の出と同時に、白い怪物はいつもの白い少女へと戻っているのでした。
さっきまでの獰猛さは欠片も残っておらず。

ただ、十分に吸収して滾った魔力だけが、二人が同一の存在であることを示しているのでした。

けらけらと笑い転げている。

ムーニアの腕を触ると毛皮の奥にはぷにっとした触感。よくよく確かめれば、
確かに哺乳類のそれとは違った弾力が感じられるだろう。

ちょっとくすぐったそうにぴくぴくっと動く。
お腹ぷにぷにされると、贅肉の少ない理想的な肌。

身体ぴっとりくっつけられ、お腹とか触られてると、そのすぐ下が危ないことになっちゃうけども。

　ちなちゃんを抱きしめるような姿で、うんうんと愛おしそうに撫でながら。

　彼女の瞳の真意を察し、狐は瞼を伏せる。世を先に去った者達へ、哀悼を贈るかのように。

　ここの家の妖精で一番怖いのはいーちゃんだ。まちがいない。

　異世界の術式系統樹を解析するのは、狐もわりと好きな部類のようだ。

　別の方向とは。
　……ほのあちゃんの飲み物は、細かい原材料は気にしてはいけない気がした。

　無駄かなーと思いつつ、べーちゃんに注意したりして。

　絶対何回か死ぬ気がするけど、それもきっとお祭り騒ぎ的に楽しいに違いない。

　くすくすと微笑みながら、ぐったりして動けなくなったちなちゃんを優しく労って。
　格好いいこと口にしたようで、実は弄んで楽しんだだけというあたりが嘘つき狐の習性か。
　だがこれは前哨戦である。一揆の物語が終わり、いずれツヅミがちなちゃんの国へ遊びにいった時。
　その時こそ、手加減一切抜き気絶しても終わらない本当の戦いの幕開けである――（戦い？）

　時につれない態度を取って男心を手玉に取る方法だとか、自分を可愛くみせる角度だとか。
　ろくでもない知識を教えるツヅミであった。なお、背後のヒトは騙されやすいちなちゃんが好きな模様。

　　

キョトンとするエシャロット。一方、リータは何やら深刻そうな表情をしているのであった。

生きながらに天使…いや、もしかしたら…
エシャロットはすでに死んでいたのでは…？

きっと、どこかで自覚していた。もう、エルフという種族からはかけ離れたのではないかと。
こうしてはっきりとわかったほうが、覚悟も決まるというものだ。

なんだか慌ただしい感じに別れつつも

・・・

それから、数日後…。

エシャロットは元気に背中に天使の羽根をはやしてばさばさしてるのであった。