いなくなったケット・シーはいつの間にか存在を変えて戻ってきていた。
　彼らは度々その力を変質させているようだが、本質のほどは変わらない。
　もっといえば、食らう力が依然として大きいようだ。

　花弁も、私の食糧も、幾ら奪われても構いやしないが。
　こいつらが世界を喰らい尽くすようになっては困るのだ。
　あの魔神はそれに手を加えた。なら、彼女ならこの世界をどうにかできるということ。

　……すこし、希望が視えた気がする。
　

予想外の言葉にくすぐったさも感じたようで、若干照れている様子。

顎に手を当てて、数秒考える間が空く。

ナスルの顔を見つつそこまで言って頷き、
それから、ふと何かに気付いたように硬直した。

口元に笑みを浮かべそう告げたブルーノは、
再びナスルのレッドベリルの方にちらりと視線をやるが、
その姿は消えてしまっていた。恐ろしさを感じ、尻尾がプルッと震える。

感心したように頷く。

そう言って周囲を見渡してみたり、ストールの首元を確認してみたりするものの、
やはりサラマンダーは現れなかった。

ナスルが避けなければ、ブルーノはナスルの頭を
爪を立てないよう、ポンポンと撫でるだろう。

若干心配そうに問いかける。

　些か焦げ、錆びついた黄金の腕輪。
　ナスルは汚れをそっと払うと、祈るように額にあてがった。