「やっぱり、そういうことだったのね。」


まっかでうめつくされたけしきにあらわれた、くろいかげ。


うそだ。
なんで？

なんでセリィおねえさんがここに――？


もちろん、ふつうにかんがえればおうさまのいるらしいこのばしょにおねえさんがいるのはあたりまえ。
むしろ、おしろのそとでまっているようにいわれた猫がいることのほうがおかしいのです。

でも、おねえさんにみつからないようこっそりしていたつもりだったのに。


もしかして、きつねさんがおねえさんに猫がいることをつたえたんじゃ――？
ちらりときつねさんをみましたが、きつねさんもおどろいています。
どうやらこれは、きつねさんにもしらされていなかったみたいです。



これは――ゆめ？


しかし、猫のみまちがえのはずもなく、やはりおねえさんはそこにいるのです。
猫はあたまがまっしろになってしまってかんがえられません。



かたまっている猫をみるおねえさんのめはとてもけわしく。
猫をにらんだままちかづいてくると――












ばしん。









いきなりきたしょうげきに、猫はなにがおきたのかわからずよろめいてしりもちをつきました。


あとからほほにやってきた、じんじんとしたいたみ。
ふりきられた、おねえさんのてのひら。


ようやく、おねえさんにはたかれたことがわかった猫は、いたむほほをてでおさえました。




―――おねえさんにおこられた。
―――おねえさんにきらわれた。









おねえさんにきらわれるかも、そうかくごしていたはずなのに――
でもやっぱり――――




はたかれたほほよりも、こころのほうがずっとずきずきといたみをかんじて。
ひらかれた猫のめから、あついしずくがこぼれおちました。


猫はおねえさんときつねさんにせをむけると、いちもくさんにかけだしていました。

ごしごしとめをこすって、とおせんぼするあいてをキッとにらみつけました。

ぐすっ、とはなをすすると、ふたたびかけだしていきました。

ようやくたちどまって、おおきくいきをはきだしました。

もう、おねえさんにあわないほうがいいのでしょうか？
きっとおねえさんはそれをのぞんでいるでしょう。
でも――

――ク―く―。

「ロク、くん。」
たしかにそうきこえた。ききまちがえじゃない。
いまのこえのぬしはまちがいなく――