セリィおねえさんが、猫がまだおしろにいるとしったらどうおもうでしょうか？

きっとおこられる。
きらわれる。

でも、猫だって――



おねえさんのしごとのいらいは、おねえさんにしられてはならないと猫はかんがえました。

しなものをうけとりにきたおねえさんのエンブリオ、きつねさんはないしょにしてくれるといっていました。
おねえさんのたすけになったのでしょうか？


猫がおもいをめぐらせていると、とおくからききおぼえのあるこえがきこえてきました――





「おゥ、ようやく帰ってきたか。んで、どうだったんだよ？」


「まず間違いないでしょう。ですが・・・・・あまり芳しい状況ではないかもしれません。」


「あァ？そりゃあ一体――」






『セバスチャン！！』


ちりんちりんとすずをならし、いきをはずませて猫はヒツジのしつじ――セバスチャンにかけよってとびつきました。


「坊ちゃん、遅くなりまして申し訳ございません。」


セバスチャンはそれをなんなくうけとめてあたまをなでます。


『しんぱいしたのです！いったいどこにいっていたのです？』


セバスチャンのかおをみあげながら猫がたずねます。
セバスチャンはすこしこまったかおをして、


「すみません、ですが――そう、ただの里帰りですよ。挨拶がてら顔を見せてきただけです。」


とこたえました。
猫はそのかおをじっとみつめていましたが、やがてくびをよこにふりました。


『……セバスチャンがいいたくないなら、小生むりにはきかないのです。
でも、ぶじにかえってきてくれてよかったのです。』


とにっこりわらってゆっくりとセバスチャンからはなれました。

おどろいたのはセバスチャン。
とっさにししょーのほうをみましたが、ししょーはくびをよこにふります。
どうやら、ししょーはなにもつげていないようです。


「――全く、時々坊ちゃんは鋭くて参りましたね。」


おもわずにがわらいをうかべました。



「なになにー？？なんのはなし？？」


「あー、ややこしい奴がきやがった。別に何でもねェよ。」


「ぼくややこしくないよっ！！ひどいよししょー！？」


そこにシュテルンもくわわってにぎやかに。
猫はわらいながらそれをみつめて――



『ところでセバスチャン――あそこにいるひとはセバスチャンのしりあいなのです？』


「ッ！？」


するどくふりかえったさきには、だれもおらず、かげもかたちもありません。
しかし――猫がゆびをさしたそのいっしゅん。
たしかになにものかのいきをのむけはいがありました。


「・・・・・。」


『？？　セバスチャン？』


「申し訳ございません、坊ちゃん。少々厄介な事になったかもしれません。」


ふかくあたまをさげるセバスチャン。


「――どういうこった？」


「どうやらつけられていたようです。恐らく――旦那様の仕業でしょう。」


猫をみやるセバスチャンのひとみは、どこかふあんそうにゆらいでしました。