……君の武器攻撃は達人レベルとはいえ、あくまで常人のそれだろう？無駄に足掻かないでほしいな…。
　　ゲイル
…突風

…所詮、随所で甘さを見せるような男にあんな大役は不可能だった。
僕もまた…一から出直し。
…シオンをこの段階まで持ち上げるのに、一体どれだけ苦労したと思ってるんだい？

　　　　　　　 　　ポーン
聞き分けのない同僚は嫌いだよ。
　　ク ロ ウ
…不死鳥の再来は、もうウンザリだからね

…まぁ、お前は元より反抗的な奴だった。
いい加減に…僕の視界から消えてくれ。
　　パ ニ ッ シ ュ メ ン ト
…愚か者には制裁を

さて……

成り行き上とはいえ、世話になったね。感謝するよ。
君の体内に取り込まれた球体は…もはや僕には必要のないもの。代わりなんていくらでもある。
好きにしてくれて構わない

なんなんだ…こいつは。
力を暴走させたシオンよりも強烈な波動をいとも簡単に放ちやがって…。
おまけに、あれだけ強烈に力を行使しても全く息を乱していやがらねぇ

そう警戒しないでおくれよ…。
僕が攻撃をするのは、僕の邪魔をする連中だけさ。
力には力で対抗する。当たり前のことだろう？

ハッ、そうだな。そういう考え方は嫌いじゃねぇ。
ただなぁ…

ただ…何か？不満でもあるのかい？

おいおい、まずは話を聞けっての

…………

…話とは？

…お前からは、シオン達以上の力を感じる

当たり前の話さ。
ハルは言わずもがな。シオンにしたって、その力には相当強烈なリミッターが掛かっていたんだ。
…これが、本来の『僕』の力なんだよ

なるほどな…。
そんなら、その本来の力とやらで俺の力をもっと底上げすることも簡単なんじゃねーか？

……何が言いたい？

俺はな、もっともっと色々なことをしてみてぇのさ。
世界を巡り、強ぇ奴と戦い、追い続けてる奴にまいったと言わせる。
…今以上に力を得る方法があんなら、どんなことにだって挑戦してみせる

……飽くなき好奇心って奴かな？
割とありがちな話ではあるけれど。嫌いじゃない

お前の邪魔をする気はねぇ。
ただ、もう暫くの間は傍にいさせてもらおうと思ってな。
…シオンでさえ俺の体内にある魂の強化はできたんだ。お前ならわけねぇことだろ？

気に入らないな

あ？

勘違いしないでほしいな。その態度のことだよ。
相手の施しを期待するのなら。強者に媚び諂うのなら。
それなりの振舞い方というものがあるだろう？

……朧気ながらだけど、見えていた。
君達はここへ来た当初、主従ごっこをしていたじゃないか。
あれでいい。君は僕の従者であり、駒だ。
その自覚を持ってくれるなら…同行を認めよう

……駒。駒、か

頭が高い。
…まずは、他でもないこの僕に忠誠を誓うといい。
然すれば…更なる力を与えることを、約束しよう

ククク……。えぇ、それはもう

―――貴方様に忠誠を誓いましょう

フフ…結構なことだね。
　 　　ポ ー ン
他の同僚達もこうあってほしいものだよ

…なかなか賑やかそうだね

そうねぇ。ぶつけられたら嫌なもの投げるとかは定番よね。
トランプでもなげてみる？なんてね。
――普通に使えるものとなるとやはり癇癪玉の類かしら？

無難な相手がつまらないとはいえなくもないけど……
無難な相手でも相手に面白みがないと楽しくはないと思うわ。
全てにおいて無難なんてどれも大差ないでしょう？

ま、結構いるものよ。手ごわかったり、
面倒な性格をしているのは勿論、
厄介な事情をかかえてたりとか……ね？

ま、単なる勘でも、恐らくそういった勘はあたるでしょうね。
――そういうのはえてして下手な考えよりも適切に正解を引き当てるわ
気楽なのも考え物ね。退屈である事はなるべく避けたいし、ああ、でも

退屈になったら適当に周囲をみてみれば、
面白い物は存外転がってる……
とも聞くわね？

くく。儂は人間の女ではないぞ？
狐ならば、大好きな相手を舐めて愛情を示すは普通の行為ではないか。
それが化狐ともなれば、舐めるだけでは飽きたらぬ。こうして頬をすり寄せることも出来る。

もちろんだとも、欲求はいくらでもぶつけてくれるがいいさ。
禍根はいらん手間を産む。少しの気遣いで避けられるなら、触れぬ神に祟りなし、よ。
されと激情を抑えきれぬならば、それは仕方がない。たとえ間違えても、儂だけはそなたの味方で在り続けよう。

それそれ、その顔じゃ。
ふふん、儂もわかってきたぞ？ 主殿の「嫌いじゃない」は「好き」も同然なのじゃろ。
曖昧な感情しか抱いておらんはずの相手に、面白そうだの楽しみだのと云うのが、そもそもじゃ。

なんとなく思うたが、夜一とやらは、主殿にとって"親"に近いのではないか？
そなたをそなたとして見てくれる者。広い背中で、そなたを庇い守ってくれた者。
儂はな、主殿がそんなに甘えた表情をするのを、初めて見たような気がするぞえ。

夜一は主殿と同じ、マナとやらが密接に関係しておる肉体なのじゃろうか。
薬には良い側面と悪い側面が必ずある。治療もまた、何かを犠牲にして得られる安らぎよ。
ましてや、万能にも思えるような者ですら自由にならん体質であらば、なおのことじゃろう。
主殿よ、これは恩返しが出来るチャンスかも知れんぞ？

ふふ、儂も男同士よりは男女の方が良い。だが女に飽きたらいつでも云うが良いぞ？

……む、またそういうことを。顔が赤くなるではないか。
まったく、主殿は無自覚に口にするが、そういう言葉は簡単に云うものではないぞ！

そなたのような者は"精神的なガキ"ではない。"天然"というのじゃ、たわけめ……。
良い。気にするな。儂が全部先走り過ぎただけじゃ。
ふん、もう知らん。勝手に悩んでおればよい。儂は寝る！

循環は循環で、一方通行は一方通行じゃがの……。
ただの式神や使い魔なら、今のような関係で良い。術者が力を与えて養うのが当然じゃからな。
しかし対等ならば話は違う。儂からそなたに力を与え返せて、はじめて対等といえると思わぬか。

……くふ。ならばよい、ちゃんと儂を守ってくれるのじゃぞ？
分かりませーん。主殿が口にしてくれることが大事なのじゃ。

自分の身体のことなのに、そんなに薄情になれるもんかのう。
陸人の側も、そなたと同じ感情を抱いている。そう思う方が自然な気はする。
ま、いずれじゃな。主殿が過去にとらわれている訳でないなら、すぐ逢いに行かねばならん道理もない。

はは、当面のところは、ただ覚えておいてくれるだけで良いさ。
儂も、主殿と同じでどうしようもない過去を背負っておる。しがらみは、もう無いがの。
ただ。ぬしも儂も、つまらん過去が繋がった結果、此処で出会えた。これだけは感謝せねばなるまいて。

すぐに必要？　駆け引きが、か？
ふむ。駆け引きは想定と経験の積み重ねじゃから、一朝一夕に会得出来るものではないが……。
大切なのは、己の手札を高く見せることじゃ。恐れは焦りを産み、動揺を誘う。
実際に高い手札を持つときは、隙を見せることじゃの。慢心は油断を招き、失策を導く。

ガキの夢、か。……ああ、そうじゃな、その表現はぴたりと嵌る。
理想とは、現実に則して形を変えていくものよな。いずれ本来の形を見失いかねぬほど、歪になる。
現実を無視したような理想を輝かせ続けるならば、それはもはや蒙昧な夢でしかない。
あるいは、都合の良い理想。己の夢ではなく、誰かに見せるために書きなおされた夢物語。

おやおや。主殿は、あの白い御子に随分と厳しい立場を取るのじゃな。
それでいながら、かつてのように少年を利用するだけでなく、見守るつもりでいると云う。
存外、彼を気に入っておるのかのう？

ん。どうも、な。彼が出てこざるを得んように、ちょっかいをかけてみたが反応がない。
ハルは、シオンを守るを使命としていたような少年じゃ。姿を現せぬ理由がある、と思う方が自然じゃろ？
シオン自身が遠ざけたのではないのなら、別の何かが干渉したのではないか、とな。

……忘れるでないぞ、主殿。そなたはもう、独りでは死ねぬのじゃからな。

…不味い

最近はこういうものが流行りなのかな？

「さて――始めるとしましょうか」

「“惨劇”を。」

…まぁ、期待はしていないさ

命令・・・・・通さない・・・・・・・・