(※あいも変わらず本編とはあまり関係ありません。
　 前回の続きとなっております。
　 前回自体続きなのでそれ以前の日記の方もどうぞ。
　 良ければ過去の日記とあわせてお読みください。)

夜が訪れる。
それまでに俺達がした事は色々と店を回って、
ショッピングを楽しんだ……って……
「オイ、ぶっつけ本番か？」
「乗り込んで暴れる。
　それ以上の作戦はないわ。
　乗り込むタイミングは私が合図するし、
　正直、他に必要な事あるかしら。」
「いや、俺にも段取りとか、
　情報がないとやり難いんだが……
　情報不足でぐっさり返り討ちとか笑えないが。」
「まぁ、そうねぇ。
　暗殺者とかそういった類がいれば、
　貴方といってもぐっさりだもんね。
　だけどまぁ、
　私がいるのよ。
　貴方に死角は作らせないわ。
　ああ。
　ちなみにあいつらの逃走経路はタイミングにあわせてつぶれるわ。
　不思議ね。
　怖いわね。」
「……何しでかした。」
「逃走経路がどんな風になっているのかはあらかじめしってたから、
　隠し通路は崩落、
　その他の窓とかは開かない壊れないように細工するまでもなく、
　地下に集まってるから気にする必要はないわ。
　そんな感じかしらね。
　正面の入り口しか逃げ場がないけど、
　所詮、
　正面の入り口は掘っ立て小屋の中に隠し階段で地下に行く通路があるっていう、
　シンプルで、隠し通路がつかえなければ一本道。
　つまり、
　貴方が正面の入り口からゆっくり制圧していけば、
　問題なく殲滅完了ね。
　怖いのは証拠隠滅かしら？
　でも、既に証拠に関しては、
　あら不思議。
　ここに丸々コピーした書類があるわ。
　後は制圧した事務所から見つかればどうなるかしらね。」
「オイ。
　なんかサラッと凄い事いってねぇか。
　それにコピーした書類って偽造ってばれたら……」
「それが不思議なのよね。
　偽造なのに向こうで保管されてるのよりも精度がいいの。
　まるで本物のように。
　不思議よね。
　どうしてかしら。」
「……既にすり替えた後かよ。
　いつの間に、
　そしてどうやって……」
「蛇の道は蛇っていうけど、
　流石に理外の方法でやられたら、
　相手もさっぱり分からないわよね。
　ちなみに、
　この国乗っ取る計画ね。
　実行明日なのよ。
　それで、今向こうに主要人物が集まってて、
　王宮側で動きがあるのも翌朝という事もあってね？
　向こうの貴族側としても今まさに態勢整えてる真っ最中！
　本当はもうちょっと準備したかったんだけど、
　もう四の五のいってられる状況じゃなかったのよ。
　だから、貴方への負担は大きくなるから頑張ってね。
　私が求めているのは早い段階での殲滅よ。
　死角だけは守ってあげる。
　期待してるんだから裏切らないでね？
　ふふ。
　まあ、あれよね。
　手ごわい相手も勿論いると思うわ。
　情報が知りたいのは確かだと思うけど――
　戦場では何が起こるかわからない。
　情報が無いほうが臨機応変に対処できるんじゃないかしら。」
「――ッ！
　全く……
　だから今夜か。
　ああ、恐れ入ったよ。
　時間がないというよりは寧ろ、
　今が相手の絶頂だから逃す手はないってか？
　しかし、簡単にいってくれる。
　そうだとしても情報の有益さは知ってるだろうに。
　あれか、おい。」
「貴方に対する嫌がらせ？」
「この肝心な時に味方にそれをするか……？」
「あら、だって情報ありきじゃ、
　つまらなさ過ぎるじゃない。
　勝てる相手ならそのまま押しつぶし、
　勝てない相手なら忌避する。
　同格の相手なら、
　下手に相手の手の内を知ってるほうが厄介よ。
　貴方のいるレベルっていうのはそういう段階でしょうに。
　貴方が理論で闘うようなタイプならしっかり教えるのだけど。」
「……正論だけに何もいえねぇ。」
実際の所、
情報を得て闘うにしても、
確かに俺では情報を生かしきれるタイプではない。
逆にいえば、
少なくとも、
情報を得なければどうにもならないような相手は恐らくはいないのだろう。
もしいたら、その情報くらいは流している。
さらにいえば、
相手は失敗するなど露とも思っていない。
こちらが上げた狼煙に相手は気付く様子はなかったという事だ。
まぁ、あんなけ鮮やかに納得できる状況を作れば、
此方側の動きに気取られないのも当然、
さらにいえばあの商人も、
その周囲も情報を漏らしていないのだろう。
まぁ、そう見せかけているという可能性も無いではないが……
それならそれで、
彼女ならそれを察知して、
逆にそれを利用するだろう。
「全ては嬢ちゃんの掌の上ってか。」
「そりゃあ、想定外の刃はかわせないわ。
　たとえ想定していたとしても乱すのが私の仕事。
　帳簿を確認して気付いたとしても、
　まぁ、ろくな準備は出来ないでしょうね。
　だって。
　今日は焚き火があったみたいだしね。」
「…………
　後は決行して終わりだから、
　証拠は全部隠滅、その直前のタイミングとか、
　悪辣すぎるな。
　確認のしようがないだろう。」
「ないわね。
　軽くチェックはいれたでしょうけど、
　それでばれるような代物じゃないし。」
「最悪だな。」
「そうね。最悪ね。
　一体誰がこんな事を仕掛けたのかしら。」
「さてな。
　少なくとも悪人ではないのは確かで、
　正義の味方ではないが、
　良い奴なのは確かだろうな。」
「あら、良い女といってくれてもいいのに。」
「……俺にとっては、嬢ちゃんは嬢ちゃんだよ。
　で、それはそれとして、
　証拠について隠滅される可能性はどうするんだ？」
「ああ。それなんだけどね。
　商人さんの方でこちらが成功の合図を送ったら、
　後はそつなくこなしてくれるそうよ。
　万が一があっても、
　まぁ、資料のコピーというか、
　証拠映像があるから、
　無駄ね。
　あ、ちなみに向こうの連絡網だけど、
　ジャミングを商人さんから買い取ったわ。
　これで向こうから王宮への通信は不可能、
　誰も逃さなければ、
　王宮サイドに乗り込んだ時も楽よ。
　貴方が捕まっても私は逃げて、
　後でどうにかしてあげるから、
　最低限の仕事さえすれば問題ないわ。
　安心して。」
何にせよ、万全に万全を重ね、
完璧を記しているっていうか。
本当に嬢ちゃん相手にすると不幸だな。
しかも完全な部外者の癖に、
下手に首突っ込むんじゃなくて、
首突っ込んだ事に気取らせずに、
必殺の一撃を叩きこんで制圧するスタイル。
酷い話だ。同情したいが、
まぁ、相手は同情できる相手でもない。
剣を握る手に力を込める。
こちらの用意は万端。
後は――

――ズゥン

一瞬地が揺れる。
地震はこの辺りでは珍しくない。
だが……
嬢ちゃんが待っていたのはこの地震らしい。
ニヤリと笑って俺の背を押した。
「さ。行きましょう。突入よ。
　入り口の二人を斬り倒して、
　ドアを蹴破りなさい。
　盛大なパーティの始まり。
　期待しているわ。」
その声に俺もニヤリと笑い――
「はは、待ち遠しかった。
　やっと出番か。
　さ、仕事を果たさせてもらおうか。
　――いくぞ。」
足に力を込め地をかけながら剣を抜く。
宵闇にまぎれて近づく俺に気付く前に、
一刀で一人を斬り殺す。
流石にその直後にもう一人が俺に気付く。
だが、剣から片手を離し、
その口を掴む。
声が出ないようにだ。
必死で抵抗する見張りの男に、
口をふさいでる手を噛まれても気にせず、
そのまま剣を突き刺す。
「鮮やかとはいかねぇが、な……
　と！」
見張りにもっと腕利きをおいておけば、
それなりに苦労したのだろうが、
やはりというかなんというか、
見張りにおいている奴はそこそこ程度だったらしい。
まぁ、腕利きは自分の手元においておかないと、
いざという時に困るから仕方ないとはいえ……
襲撃者にとっては都合がいい。
不意を撃つことが出来るのだから。
そして、勢い良くそのまま、ドアを蹴破る。
想いっきり蹴りを入れたせいか、
ドアは勢いよく開き、
その様子に驚いた男達を斬り伏せる。
ここまでは想定内。
想定内過ぎて拍子抜けするが、
ここからが本番だ。
さて、突入しようとした矢先に、
俺の肩を叩く人物がいる。
「じゃ、宣戦布告してくるから、
　相手が私に視線を向いてる隙によろしくね。」
まるでピクニックにでもいくかのように、
気楽な声が。
彼女は俺を先導するように、
地下への階段を降りていく。
「何もない掘っ立て小屋だと思ったら、
　こんな所に堂々とまぁ地下の階段とはな。
　隠し階段なんだから隠しとけと思わないでもないな。」
「普段は隠しているのでしょうけど、
　どうせもう隠す必要もないし、
　使われる予定だったから、
　隠していた床板外したんでしょ。
　ま、お陰で逃げ場はないのだけどね。」
軽口をたたきながら階段をおりていくと、
大きな扉が見える。
その扉を嬢ちゃんは勢い良くあけ。
「こんばんは、皆様方。
　幸福薬の売れ行きはどうかしら？
　随分売れてるみたいね。
　それも王宮の方にもよく売れて、
　今や手中に収めたのだとか。
　ああ、素晴らしい。
　あなた達と、貴方達の協力者によって、
　王家は倒れ、
　貴方達の天下がやってくる。
　そんな短い夢はみれたかしら？
　でも、ここでおしまい。
　さ。
　それじゃ、夢の終焉を始めましょう！」
そう大見得をきって、
火炎瓶を投げつける。
炎が燃え広がる。
その様子を見て悲鳴が、怒声が部屋を多い尽くす。
慌てて消そうとするもの、
隠し通路から逃げるものに混じって、
護衛の奴等が魅月へと殺到するのを見て取るや、
俺は嬢ちゃんの背から飛び出て切り伏せていく。
流石に、弱い相手もいるが……
強い相手もいる。厄介だ。
そう思った時――
「どうせ敵は入り口にくるから、
　そのまま下がりなさい。
　１対１で、
　危ない時は私が微妙な援護すれば、
　大体どうにかなるでしょ。」
そういって嬢ちゃんは、
一人入ってきた扉から出て、階段を上っていた。
なるほど。
確かに馬鹿正直に１対複数なんてしてやる義理はない。
俺もじりじりと後退して、階段の所まで下がる。
ここまで下がれば、
ある程度の剣を振るうスペースを確保しつつ、
１対１で戦える。
桁外れに強い奴がいれば分からないが、
流石にそんな奴はいない。
いや、正確にいえばいるにはいる。
だが、幸福薬で強化した相手に関しては……
「幸福薬の強化は厄介よね。
　まぁ、私との相性は最悪だけど。」
嬢ちゃんがどういう手を使ったのか分からないが、
発狂し、攻撃が単調になり、
仲間割れを始めていく。
流石にそんな相手に負けるはずも無く、
疲労こそあるものの、
次第に敵の数は減り、
やっと剣を振るう相手がいなくなり、
周囲をみてみると、
残されたのは非戦闘員のみのよう。
「……やれやれ、終わったか？」
「そうね。
　後は残された奴も片付けてくれるかしら？
　扉からでる奴は私がなんとかするわ。
　まだ火炎瓶もってるもの。」
「それはまた頼もしいな。」
だが、依頼人の命令とあっては仕方が無いし、
元々誰かを逃がすつもりも、
命乞いを聞く予定もない。
ここで禍根を断っておかねば、
後々厄介な事になる。
俺はゆっくりと、剣を振るい片付ける。
無抵抗な相手を屠るのはあまり気分のいいものではないが――
ま、奴等に関しては自業自得か。
今まで自分達は高みの見物していたんだ。
――やっと舞台に上がったんだから、
相応の扱いが適切だろうとも。

霊を操り、
幸福薬を飲んだ奴等を発狂させる。
どうやら強い奴ほど、
この薬を渡されていたらしい。
まぁ、実際の所、
薬を使えば強くなるし、
薬で強者を縛るというのは悪いアイデアではない。
ただ私との相性が最悪だった。
それに――
思ったよりも彼が強かったのもある。
切り札の一枚や二枚、
用意してあるかと思ったけれど、
どうやら王宮側の方に配備されているのだろう。
まぁ、確かに、
こちらは危険性が薄く、
あちらこそ実力者が必要になるだろうから、
仕方ない事とはいえ……
予想よりも楽な展開に拍子抜けしてしまった。
まぁ、普通であれば、
王宮側に戦力を回すのが最上の策だろうし、
寧ろ、
戦力を回さねば失敗の可能性があがる。
失敗する可能性を出来る限り排除すれば、
最善の手といえるだろう。
ただ、それは相手が私でなければの話。
迅速、かつ、連絡を絶った上でこちらを潰したとなれば、
その手は最悪の悪手になる。
なぜなら、こちらを潰した時点で、
私が裏から手を回していた策が実行可能になるからだ。
態勢も戦う準備も整ってない相手と、
用意していた相手。
そして――私と彼という鬼札。
勝ち目などもはや彼らにない。、
けれど、最後の時まで私を楽しませてもらいましょうか。

人が入って動かす着ぐるみも微妙に不気味だと感じているが、
逆に人が動かすのでなく自ら動くぬいぐるみなら不自然さが無く可愛い類もいるのかもしれない…？

優しい言われて、年下に言い聞かせるような口調で小言を。でも微妙に視線を逸らしてる。

顔に押し当てられた手の匂いを嗅ごうとし、風の結界で匂いがしないので首傾げている大型動物