初めて彼らに出会った時の印象はお世辞にも頼りになる、とは言い難い雰囲気でした。

箱を操り戦う少年と、ワタクシと同族の年端もいかない少女。

グラファさん好みの甚振りがいがありそうな人達だな、という感想しか抱いていませんでした。

案の定グラファさんは彼らをコテンパンにして、それで終わりかと。

ただ、グラファさんは彼らをやけに気にしている素振りを見せていました。

私は面識が無いのですが、グラファさんはもしかしたら過去に会っていたのかもしれませんね。

監視するためと言って防具を渡したり、ワタクシが勝手に合成を行ったのも見逃してくれたり。

極めつけは、貴方が言っていたこの言葉。

その頃は意味が分かりませんでしたが、今になって思えば貴方は彼の素質を見抜いていたのですね。

だって、目の前にいる彼はこんなにも―――

ワタクシの呼び出す狼たちをいとも容易く蹴散らしていく。

いつの間にやら、ワタクシを退けるまでの力を身に付けていたんですね。

それは、望んでいた事でもあり、望んでいなかった事でもある。

彼が勝ったら、ワタクシは一体どうなってしまうのでしょう。

グラファさんを処分出来なかったワタクシを、今度は処分しようと追手が来るのでしょうか。

ああ、先日使い方を教えた『アルデバラン』もきちんと使いこなせている。『ヴート』での増幅も見事ですね。

彼は今後も伸びていくのでしょう。それを見守れないかもしれないのは、少し残念です。

ふふ……ワタクシは正気ですよ。

だって、彼に倒される道を選んだワタクシが、正気でない訳がないじゃないですか。

膨れ上がった火球が眼前に迫って、その後の事はよく思い出せませんでした―――

目を覚ますと、見慣れた巨獣がワタクシを見下ろしていました。

彼らと戦っていたはずなのに、周囲に彼らの姿はありません。

辺りの風景を一望出来る光景から察するに、グリーンパレスの外れでしょうか。

いつものように前足を振り上げてワタクシを睨み付けるグラファさん。

あんな事があっても、貴方は何も変わりませんね。

全てを話そうと思っていました。

ワタクシに出来る最後の告白。

それを話して、もう楽になりたかった。

いっそ、貴方に食べられるというのも悪くないでしょうか。

滑り込んできた言葉に、耳を疑いました。

知ってる？ 事情を？ どうやって？

ワタクシは一度も話した事がありませんし、勘付かれるような素振りにも身に覚えがありません。

その能力には一つ思い辺りがあります。

彼女が無意識の内に、という事でしょうか。

でも、事情を知っているのなら、貴方はワタクシを許してくれないのではないでしょうか。

自由を愛する貴方から、自由を奪ってしまっていたワタクシを。

猛々しくて、乱暴で、粗野で、それでもこうして、力ずくでワタクシを救ってくれる。

―――ああ、貴方は本当に何も、変わらないですね。