俺様は猫の意識である。下僕(*A子さん)から子分(*猫ヌイグルミ)を貰ったんで運んでいたら
悪目立ちしたらしく変な人間に因縁つけられた。
俺様ピンチ再びだよ！ま、今度は死なないけどなー。

「あー…じゃ、会う会わないは道が通ってから考えるよ。」
不定期に電話で会話する相手から、一度くらいは故郷の連中に無事な姿を見せるべきではと言われ、
適当に誤魔化す返事をして岩絃は電話を切った。

ふう…
なんとなく溜息が漏れる。
閉じた島に封じられてから自分の時間経過は数百年。物質変化すら封じられ停滞していた空間だから身体の成長と劣化は零年。自意識殺して機械的に生きていただけだから蟲としての戦闘経験は積まれたが、人生経験としてはその十分の一にも満たないだろう。
で、故郷の世界での時間経過はたったの十数年であり。でも物質と人々との関わりに溢れた世界では少ない時間でも濃密に変化して行く。
十年以上も経ってるなら変わるヤツは誰だお前って勢いで変わっているだろう。外見は変わらずとも人としての中身が。朔なんか特によく解らん切っ掛けで態度激変するヤツだし。

実はこういうの二度目。
ガキの頃なんでもううろ覚えだが…屋敷の時間封鎖された蔵に事故で閉じ込められ。外の時間で数日、心理時間だと子供の思考では見当もつかん永さ封じられたことがあった。当主から狂わず耐えたのを感心された位だから結構な時間経過だったんだろう。
で、閉じ込められる前までは面倒見の良い兄ちゃんだった朔位は、俺が救出された以降に会ったら近寄りがたい攻撃的な野郎に変わっていた。
直接被害にあったのは俺の方だってのに、なんであいつがグレるんだよ。ったく。
俺を見つける為になんかよく解らんマホウとか責任問題とかで迷惑をかけたのは確かだけどな。

電話相手の話から察するに、今度の朔位は逆にずいぶん性格丸くなってるようで。
俺の子供とやらの面倒もよく見ているらしい。
ああ、そうだ、子供！俺が知らん間に俺の子供ってー存在まで出来てたんだ。それも二人も！
うわー…「帰りたく無ぇ……」

「爺！」
「はっ。」
ついボヤキを漏らした。ら、俺の周りちょろついていた姫さんが執事を呼びつけ、心得ているとばかりに執事の爺さんがクソ高級そうな奉書と筆記用具と筆記台を持って現れ。
姫さんが奉書の最後に俺の知らない文字で一文書き加え、サインらしきものを書き添える。
奉書には招待とかなんとか書かれているのも見え…ん？『奉書』で、俺が読める文字の手紙だと？
姫さんと俺の目の前で爺さんが封蝋を施し。二人がアイコンタクトで頷き合うと爺さんは手紙持ってどっかいっちまった。なんの連絡だか知らんが出しに行ったんだろう。
……何の連絡だか知らんが、嫌な予感がするな。

姫さんは満面の笑顔で俺を仰ぎ見、宣言した。
「ツチグモー！おぬしの願いを叶えて遣わすぞ。」
「ぁあ？」
「帰国の機会を作ってやったぞ。帰りたいのじゃろ。」
「ぁあ！？」
おい待て勘弁してくれ。冗談は止めろな？

「あのなあ、姫さん。人の話を勝手に盗み聞きは止めろ？まあ、今のは聞かれて構わん話を聞こえる場所でしていたから、いいんだが。
聞いてたならちゃんと内容を聞き取れ？

俺は『帰りたくない』と言ったんだぞ。」

「うむ。つまり帰りたいんじゃろ。」
「頭大丈夫か？」
「不敬ですぞ！！」ゴッ
話の通じない姫さんについ突っ込みを入れたら、間髪入れずいつの間にか戻ってた爺さんからシルバートレイの縁を頭に叩き付けられた。
お、変形しないな。いつもはトレイが歪んで一々爺さん直していたんだが…？って疑問が顔に出たらしく。爺さんが得意げに「ツチグモ殿、貴方様殴打専用のミスリル銀製特注トレイですぞ。」と囁く。おいおい、金と技術の使い道を間違えてるだろ、それ。

「よいよい、構うな爺。こやつの察しが悪いのはいつもの事じゃー。」
「はっ。」
……子供といえども女から察しが悪いと言われるのは堪えるな。子供でも女だからか。（←つきあう女性から『女心が解らない人ね』と言われる人）
いや、今はそういう話じゃねえな。ちょっと刺さる言葉を頭から追い払い。
適当な場所に腰掛け、どういうつもりだと姫さんの話を聞く体勢を取る。

「おぬしの世界の倭国に住まう神々のサミットから招待状が届いておっての。
出ようか出まいか迷っておったのじゃがー…」
俺が漏らした呟きを耳にして出席に決め、今さっきの封書で返事を出したらしい。
で、護衛と云うか、眷属の立場で俺も連れて行くと書き添えたと。
どんな嫌がらせだよ。
「不敬ですぞ。」コン
また小突かれた。
「何にも言ってねえよ。」
「顔に出てます。姫様のご厚意を悪意と捉えた顔でしたぞ。」
「…時々思うんだが。あんたらの辞書には『余計なお世話』って言葉は無いのか？」
「存じませぬな。『気遣い』や『配慮』『察し』ならございますれば。」

やれやれ。
『帰りたくない』と感じている時点で、『帰る可能性と手段』を考えているってー事か。
ん？手段……？
「俺の世界のって、行けるのか？」
「おぬしの国の神々は招待しておいて入国を拒絶する無礼者揃いか？違うじゃろー。」
あー、招かれれば入れるってマホウとか術でよくあるルールか。偽りの島に行けたのもソレだったしな。
しかし、神を名乗って異世界の王族を招き込むってどんな団体だよ。そんな胡散臭い集団が俺の世界にも存在してたのか。
………まさか当主の差し金じゃねえだろうな！？



ははは、違うよ。そうなんでもかんでも私のせいにされても困るな。
普通に出雲から神在月の神々の集まりに特別枠で賓客として姫神様を招待しただけだって。
大妖と呼ばれる存在とはいえ所詮は一妖怪の私でも出来る異世界渡りなれば。神を名乗る方々なら簡単にできないとね。
ま、うちの一族に術に疎くて神の存在も禄に感知できない子が居るとか、丁度その子が無自覚に面白い異界の神――キングダム形式で民を従え界渡りを繰り返す神――の世話になっているとか、話のねたにどっかで漏らしたような気はするがねぇ…？

どこぞの女神とか。

>猫さん

抱き上げてもふろうとしています

ねこさん＝クロさんと勘違いしたままで
クロちゃんに戻らないのかな、なんて思っているところに新たな刺客鴨の出現！

新たにやってきたカモさんと、ねこさんを見比べ。

耳も無くヒゲも無く、にゃーんとも言わない。
ごくごく一般的な鴨に見えました。

立方体は１歩後ろにさがり 鴨の突き刺そうとする葱をかわした。
そして立方体のいた場所には赤くなるほどに熱された熱岩が置かれている。

ここに居るのは食材ばかりだというのに、葱を焼いて食べる事しか考えていないようだ、、、