おにいさんのはんのうがないので、なにかしっぱいしてしまったのかとふあんになりながらもちぢこまっています。

うまくケットシーとしてごまかせたとおもったのもつかのま、けいやくのことをすっかりわすれていたのか、おろおろととまどうばかり。

しょうめんにきたおにいさんに、

とかきかけて――ケットシーがボードをつかっているところをみたことがないのをおもいだし、いそいでうしろにかくしました。

それっぽくなきながら、ネクターをみせてみました。すでにけいやくをしている――ほかにごしゅじんさまがいるエンブリオをあらわしているつもりのようです。

少しブルーノの頭のてっぺんを見上げた。

約束である引率の報酬をブルーノへと払ったあと、
ブルーノは最初に出会ったときと変わらない態度で別れの挨拶を告げて
盲目の少女の前から立ち去ろうとしていた。

しかし、少女は内心でどこかブルーノという青年に対して、
自分と同じような不安があるのではないかという思いを抱いており、
その結果少女は恐がりながらも声を出した。

一揆に参加したころから変わらない声の掛け方。
どれだけの日数がすぎてもその声は詰まり気味でありつつ、
震えの隠れないおびえた声色。

それでも少女は声を掛けようと思った。
自分がこんな口調なのはどうしようもない、
けれども目の前には話してみたい人がいる。

だったらおびえてちぢこまっている場合じゃない、と。

胸のなかでだけセレナの名前を呼んで、
声を呼ばれたのかどうかよくわかってない様子でこちらを振り向いたブルーノに向けて、
今度こそ大きな声で声を出した。

内心には「他者と異なることへの恐れ」への気持ちを話してみたい、
暗く冷たい思いを抱きながらも少女はまた一歩、
他者との距離を縮めていこうとしていた。

　そうして支度を始めたブルーノを眺めるナスル。
　食器に米を乗せる手つきを見て、ナスルはすかさず地面に座った。
　これから何を渡されるかを見越しての察しの良い動きである。
　

足をトントンとさせながら