タンポポ荘の外、入口の程近く。

私はひとりで座り込んで、建物内の騒ぎを聞いていた。

彼ら彼女らに何か大変なことがあっているようだという事も分かっていた。
それは住民の力で解決されていくべき問題なのかもしれない、とも予想がついていた。

ポポロと名乗る管理人から貰った鍵を握る。
私はこれを持つ物としてそれに参加するべきだったのかもしれない。

しかし――それはできなかった。
その原因の根元は、きっと今私が悩んでいる事に通じている。

立ち上がり、空を眺める。最初にここに来た時より、ずっと遠くにそれは広がっている。
きっとこの建物が再び空中に浮かび上がる日は、すぐに来るだろう。

だから――それまでに、色々な事が片付けばいい。
この建物が『いつも通り』を取り戻した時、私も笑顔でここに来られたら。
それはきっと、とても楽しい日になるだろうなと思う。

――だから、今だけは。
この快活な騒ぎ声から、もう少しだけ立ち向かう勇気を貰いたい。

建物の外に立つ私は、ぎゅっと右手を握りしめた。


(Eno.5、ポポロさんのコミュニティ『タンポポ荘』をお借りしました。)

　――しっぽが揺れている。