きっとだいじょうぶ……きっと……だいじょうぶだから。
ね？こわがらないで……ほらもう寝なさい？

お姉ちゃんを安心させてね？……うん、良い子だね。

逃げ場はないようだ。

ふむふむと頷いている。

でも、気をつけるに越したことは無いですよティーチェさん
ポーッとしてるので、幽霊じゃなくても引きずり込めそうですね

水の異形が一瞬揺らめき、胸と尻の辺りに膨らみを帯びる
緩いローブを着た女人のような形を取った　……身長はそのままで

たどたどしく、けれど必死に、真摯に紡がれた少女の気持ち。しかしそれを聞く青年の表情はやはり暗いままだった。
少女の言うとおり、青年には記憶のこと――そしてまだ少女にも告げられていない、自分を蝕む病のことがあった。

刻々と弱まる命の火は、下手をしたらこの戦いの終わりも迎えず尽きるかもしれない。
それよりも前に、剣を握れなくなる日がきっとくるだろう。

だから――……、

言い終わらず溜まり出すあなたの涙を、青年が慌てて止める。

静かに、しかしはっきりと。他でもないあなたへと届く声でそう告げる。
気付くとその表情も先程の翳はなくなっており、いつものような晴れやかな笑顔に戻っていた。

青年の指があなたの涙を優しくぬぐう。

――だから、彼女の傍にいたいのだ、と。

いつ尽きるとも解らない生でも、確かに今は生きている。だからこそ、悔いのない選択を選びたい。
たとえそれが叶わない約束になっても。共に行くと言ってくれたあなたを、選びたかった。

――なんてことはない。結局のところ、青年も惹かれていたのだ。
自身を通して過去に立ち向かったあなたに。他でもない自分の未来を、見出すほどに。

と、相手の取り出した本を興味深そうに軽く身を屈めて覗き込んだ。

何度か翼で撫でる。190cmに届くかと言う身体に見合った大きな翼は、
その身体を支えるのに値するしっかりしたモノだ。