ミオがどこからか古そうな紙を取り出すと、指で何かを書いていきます。
指でなぞった箇所は、黒いインクで描かれたような、複雑怪奇な文様が残されています。
書き終えたそれを手放すと、風に流されて、二人から少し離れた場所まで飛んでいくと、
突然、大きな棘とも触手ともつかない何かが手紙を突き破るように現れ、一瞬で消えます。
もし誰かがそれを手紙として受け取っていたら、危なかったかもしれません。

彼女の言う身体を作り直すということが、どういうことなのかはわかりませんが、
とりあえずは身体が汚れて困っているということはなさそうです。

※かみは　ちょっと　じゃあくに　わらうのであった。

呼びに来たナナシと一緒に居間へ。
そして食卓についてる露草に挨拶。

一応きちんと手を合わせたものの。

食べ方は子供なりにちょっと雑。

ナナシに、名を残す理由を聞かれれば。口端を吊り上げながら一言で答えた。

我に敵なしと言わんばかりの不敵な笑みと、灼炎を彷彿とさせる何者にも染められぬ強い意志の宿った瞳がナナシに向けられる。
だが、それは一瞬の事。すぐに笑みを元の、気安いものへと崩して口を開いた。

茶化すようにウィンクを一つして。しかし声は真摯に、そう語った。

結構やる気らしい

　

ナナシに連れて来られた先、示された座布団に言われるままに座る。
呑まれたか或いは感じ入るところがあったのか。
普段以上に静かだったように思う。

戻ってきたナナシを見返す瞳は常の通りに凪いでいて、
たった一度、ありがとう、と頭を下げて受け取った。
特段ナナシの存在を気にする様子も見せない。
静かな印象をそのままに、ナナシの作った雑穀粥を口に運ぶ。

食べている間も同じく無言で、
ただ、半分程を平らげたところで、ぽつり、零した。

訥々、続ける。

淋しがるでもなく。
淡々と乾いた言葉だった。

声をかけられたなりこそは一瞬怪訝そうな表情をしたものの、相手が掌に生んだ一輪の花を見れば、ぱああ、と表情を輝かせ。
瞳をきらきらと光らせるようにして目を丸く見開き、好奇心、興味、そういった子供特有の眼差しを相手へと向けた。

ジュリ、と。
自らをそう呼ぶ少女は、相手が抱いている違和感に全く気付く気配もなく、警戒心を抱く様子もなく。

そう、首を捻りながら、答えてみせ。