エメリーは祖母、ガーネットのことを初めて聞いた。
ガーネットはエメリーが生まれた後、病気ですぐにこの世を去った。
彼の名前はガーネットに因んで付けられたらしい。

家の地下室は物置になっていて、子供は入っていけない決まりになっていた。
昔話が終わると兄弟の両親はそこの鍵を開け、彼らを中へ案内した。
色々な衣装や道具があった。
いつも見ている内装とはまるで違う、華やかな芝居の世界がひそかに眠っていた。
エゼルはただ、にこにこと笑っていた。普段と変わらない。
マリーは心なしか悲しそうに見えた。そういう顔つきでもあった。
エリックは衣装に触れながら父親と同じように笑っていた。
そしてエメリーは、他の者に時々そこに来ても良いかと聞いた。
散らかさない、他の家の友だちを連れて来ないという条件を付けて、
エメリーは時々地下室を見るようになった。

居間のテーブルの上には花瓶が置いてあり、その中にはいつも切り花が入っていた。
家の者が時々その水を変えてやるのが掟だったが、いつしかそれは造花に入れ替わっていた。
マリーが端切れで作った花だった。

如何なる物事にもいつかは終わりが来る。
この、しょーもない笑いの拷問にも、終わりの時が…

脇腹から転がり出た毛糸玉を、黒猫が咥え去っていったのである。
どちらにしろもう春だ。セーターの需要は減りつつあろう。

ジーヴが一人でいると、鳴子が近づいてきた。
また茶化しにきたのか、しかし、様子が違う。

そう言って、彼女はリボンで口を塞いだ小さな袋を手渡してきた。

あぁ、これはどうも、と礼を言おうとするより彼女は二の矢を次ぐ。

渡すものを渡し、言うだけ言うと鳴子は去って行った。