言葉は、いつも足りない。
私には、言葉を十全に使うための素養がないのだと、思う。

まともに他人と会話をすることもなかった幼い頃からの習慣。 諦めによって捨ててきたもの。
今になって、知らず損なわれていた自身に気づく。
取り戻すには遠い、その欠落。
かあさん以外の誰かとこんなに言葉を交わすことになるなんて、かつては思ってもみなかったのだ。

投げかけられる言葉をまともに受け止めていては、壊れてしまいそうだったあの頃。
まだ長かった髪の奥に隠れるようにして、耳を塞いでいた月日。
口を閉ざして、嵐の過ぎるのを待つような心持ちで、いのちに与えられた時が過ぎるのをひたすらに待っていた。

私は閉じていた。
貝のように硬く己を鎧って、わずかなその隙を縫って届く痛みに身を竦めながら臆病に。
そうして、それ以外のやり方を知らないまま、ここまで来てしまった。
外界に触れないことを選んだ私は、もはや生身で世界と相対するには脆すぎる。
いつかの日に強く閉ざした内側を、自分自身でもうまく扱えない。
優しくしてくれるひとの手にさえ、怯えるほど。

壊れないようにと閉ざした殻の中で、息ができずに喘ぐ愚かしさ。
罪人のしるしが黒ぐろと、内に宿す、仮初めの安寧をも蝕んでいく。

こんな私を憑坐にして、真朱は穢れてしまわないだろうか。
肉体を失ったあの鬼の子に私の穢れを移してしまったらと、それだけがひどく心配だった。
真朱が私に憑いてから、罪人のしるしがまた、わずかにざわめいている。
罪を重ねるたびに震えるしるし。

そこにいるはずの玄雲を、そういえば、しばらく見ていない。

プルは四本の手で燈子の手を握ると、ぷらんぷらんと振っている。

作製依頼受け付け中
Lvは18or19、依頼の際は詳細をホームで確認した後
ホーム、もしくは伝言にお願いします。