大廊下。
その重々しい雰囲気に、不吉な予感だけは一回りも二回りも大きく膨れ上がる。
ヨドは元々雰囲気にのまれ易い性質なので大人しく縮こまっている。
それはいい。
カッパが全くちょっかいを出してこない。
それがどうにも落ち着かず、ティムラハは忌々しげにカッパを睨んだ。
それを受け、自重しておったのに不毛じゃとカッパが抗議のセクハラを開始し、
尻をべちんべちんと叩かれ漸く妄想に気圧されていた自分と向き直ることができ――

はっと目を見開き、かなりのショックを受けたのだがそれは置いておく。
ついでにカッパが嬉しそうにしていたのも置いておく。

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アマハルは壁の彫刻を見上げていた。
目元は何時にも増して気だるげで、口元を袂で抑えており表情が今一つ読み取れない。

鬱屈な表情で憎々しげにこつ、と壁を叩く。

ティムラハは眉間を押さえ、ぬいぐるみのような外見になってしまったあるエンブリオを見て呻いた。
外見から歪められ裁縫で継ぎ足されるぬいぐるみ。
どう見ても、以前兵舎で見た複数の異なる獣の身体を継ぎ接ぎされた、歪な獣と発想が同じである。
その彼が意識の入れ物に使っているのは死体だ。好き勝手にやらかしてくれている。
彼には彼の譲れぬ(譲らぬ)領分があるのだが、
明確に見分け、切り分けられるほど、ティムラハは外法への理解はない。が。

そう思う程度には、アマハルは現状を不愉快に感じている、ということは読み取れた。
だからと言って、直接干渉するつもりはさらさら無い――というのは、長い付き合いから把握している。
他所は他所。所詮は他人事。あくまでも、遊ぶのは自分の手の届く範囲で。

◇◇◇

クマちゃん(女の子)の事情。

（河童に向けてウインクをひとつ、ティムに向き直る）