私は取引のために兵舎へ赴いている。
やはり単独での行動は心細く、この暗い屋内においては周囲にほかに人の居ない時もある。

王の建造した建造物の中には、ひどく不死の化け物が跋扈している。
亡者の類のなれの果てを見る度に不安は増す。私が葬った幾人かの男たちが、今その手を過去から今にかけて伸ばしているのが判るからだ。逆にあのぐらいわかりやすく人の形をしていなければ……私もこうにも不安で居ることはないのだろうけれども。
彼らはいつも人の形をして私を掴んでは謝罪を繰り返し繰り返し聴かせようとする。私はあの昏睡以来からか、死んだ時の彼らの様を全く思い出せなくなっている。生きた彼らしか私の脳には残されてはおらず、それも日増しに現実感を伴って、ときにはエンブリオを借りて現われては消える。

私は早くこの暗がりから出てしまいたい。

大剣についた血を乱暴に振りはらう。