自然とはすなわち――



「守り人ではあるが、内からいづるものは“悪意”ではありませんからねぇ。」

巻物を手に、

「いえ、その必要はありません。現状の属をお借りしてるだけで十分ですよ。」

字に見えなくもない、黒墨を見ながら

「余計なことしたいと申されましても――、」

しゅるしゅると、巻きしまいながら

「では、また。」

懐にしまう。


「せんさま、ひとりごとですの？」

「いえ、困ったちゃん２号さんから“着信”がありましたので仕方なく。」

「あ、おもいだしたですの。“でんわ”ですの。くもさんですの？」

「そうです。あの方も暇さえあれば、という人ですからね。」

なるほどこまったちゃんですの、と式妖精は飛び回る。
果たして１号は誰なのか、という問いは置いておく。

「まぁ“神”は流石に手に余るので、助力もある手前無碍にはできませんし。」

「せんさまはせんさまですものね。」

「ところで――」

橙の片目だけで、式妖精を見据えて

「なんですの？　ですの？」

「まぁ面白いので、それも“もらって”おきました。」

頭にクエスチョンを浮かべたままで、式妖精は多重の姿で疑問を口にする。
姦しいより喧しい困ったちゃん１号である。

「人は、時にそういう言葉を口にしますからね。」

すっ――と目を閉じる。

「“悩”み、“戦”い、“流”され、“渇”え――過ちに気付かねば。」



―― 底、である。

無言で差し出した。

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（ひよこが一羽、てくてくと歩いている）

（どうやら同行者を捜しているようだが・・・？）