森の探索を終え、今度は臨時の別動隊との合流を指示された秋月は一度街へ物資の補充に戻る。
　一夜明け、宿を出ようとした秋月をフェリアが待ち構えていた。

　渡されるままに差し出された木箱を受け取り、開いて中身を確かめた秋月は眉を潜めフェリアを見上げる。
　中に入っていたのは一見すれば指先ほどの小さな宝石。
　フェリア自身もイヤリングとして身に着けているそれに秋月は若干ながら嫌な思い出があった。

　フェリアが自らの世界、ブリトニアから持ち込んだそれは精霊の力が結晶化したもの。
　彼女達の世界ではそれに魔力を込めることで発破する強力な爆薬としての用途がある。
　ただの宝石と思って話題に出した時、フェリアが実際に遠くへ投げて爆破してみせた際、
　彼女が間違えて分量を多く設定したために驚くほどの轟音と爆発を伴って彼に印象付けた。

　取り扱いを誤ったことについて秋月自身は知らないのも相まって
　彼にとって精霊石は『ダイナマイトより厄介な爆発物』として印象付けられていた。

　死者を操る術を持つラズロ。以前撃退した王国側の人間は、死者を冒涜することに嫌悪を示す秋月と違い、
　彼女にとっては別の意味で厄介な相手だった。

　それまでの王国側の人間は一揆に参加する者をただの烏合の衆と捕えている節があった。
　しかしラズロは相対した際に『反乱軍』とフェリア達を指してそう定義づけて言った。

　王国側はまだ一揆を軽視しているために本格的に鎮圧しようとしていない。
　おそらく本来兵力も物資も圧倒的に差がある現状で、一揆を成功させるには軽視されているうちに決着をつける。
　それが二人共通の見解だっただけに、王とつながりがあることを示唆するラズロが軍として定義づけたことは
　一つの目論見を打ち崩されたに等しい展開だった。

　内心断る理由を選ぶように紡いだ発言を遮られ、秋月は遅れて出てきた宿から出てきたノームを一睨みする。

　宿で道中の食事を用立ててもらったがフェリアの姿を見て追加してきたのだろう、それを差し出すとフェリアは笑顔で受け取る。

　じゃあ使い方教えとくね。

　自分を放って打ち合わせを始めた二人を睨み、やがてうなだれると、秋月はノームに食糧を投げてよこすように呻いた。

　冬の寒さが厳しくなる中、食糧に添えられたお茶に口をつける。
　深い茶葉の味と程よい温かさだけが彼の味方だった。

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ノームとアニマ、それと少し後ろを離れて歩くブリキと共に
臨時部隊との合流地点へ向かいながら無精髭を撫でながら思考を巡らせる。

不意に立ち止まる秋月に首をかしげるノーム。

言うや否や走り出す秋月をノームは短い足を必死に動かし追いかける羽目となった。


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共同戦線を図っている別動隊。その一人、彩香＝クライシスにつき従うキノコ状の生物達。
その外見に反し組織だった統制を行う彼等の一人（？）国家啓蒙宣伝省大臣キクラ＝ゲッベルス。

彼が部下のキノコ達に運ばせた木箱を受け取り、中身を確かめると秋月は頷く。
それは綾香が使う銃火器に使用する銃弾の一種だった。

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街に滞在している異世界ながら同じ日本人の隼人の元に訪れ、ライターと煙草―
喫煙歴のある秋月自身好ましくないと思い、吸うことをやめていたメルンテーゼ製のそれを受け取る。

不意に、脳裏にシュウスケ、フィリーの顔がよぎる。

わりいな、流石にここのマッチは馴染まなくてな。お守り代わりにライターは使わせてもらうぜ。

お互い片手をあげて別れを告げ、それ等をベストのポケットに詰めていくと頷く。

再び走り出す秋月を追いながらノームは彼の横顔を見上げる。

そう言って胸を張る。大人ぶりたいお年頃なのだろうか。

そう、フィリアスはおよそ15cm前後しかないのだ！